更新日 2026年11月1日

現場のリアル|製造・食品の人権

人権の質問票で問われる外国人の働き方と来日の費用

取引先から、人権への取り組みを問う質問票が届くことがあります。工場で外国人が働いていれば、働く時間や契約、来日の費用の扱いが問われます。担当者が集める記録と、その背景にある国内外のルールを順に見ます。

現場のリアル #0654万円来日前に払った費用の平均

まずやること

  1. 外国人が働く職場ごとに、勤怠の記録と、36協定(残業の上限を決める労使の協定)の上限を照らし合わせます。
  2. 来日の費用を誰がいくら払ったかを、本人と受け入れに関わった機関に確かめます。
  3. 雇用契約書が本人の分かる言葉か、パスポートを会社が預かっていないかを確かめます。

質問票は取引先への説明の1つ

日本政府は2022年9月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を出しました。サプライチェーンは、原料から販売までの取引のつながりです。

農林水産省は2023年12月25日、これを主に食品の製造業向けに書き直した手引きを出しました。

この手引きは、取引先への説明の例を3つ挙げます。質問票への回答、行動規範(取引先に守ってほしい決まり)の確認への回答、訪問や監査への対応です。中小企業でも、取引先への説明には取り組むよう求めています。

質問票は、SAQ(セルフ・アセスメント質問票)とも呼ばれます。国連グローバル・コンパクトの日本の団体は、各社が共通で使えるSAQを日本語・英語・中国語で公開しています。

パスポートの預かりも強制労働のおそれ

ILO(国際労働機関)は、強制労働を見分ける11の指標を示しています。身分証明書の取り上げ、借金での束縛、度を越えた残業などです。

農林水産省の手引きは、日本でも起きうる例を挙げています。パスポートを会社が預かること、寮からの外出を許可制にすること、断りにくい残業、賃金の未払いです。どれも、強制労働とみなされるおそれがあります。

業種違反があった割合多かった違反
食料品製造73.6%(1,662のうち1,223)安全基準、労働時間、割増賃金
全業種73.2%(11,355のうち8,310)安全基準、割増賃金

この表は、技能実習生を使う事業場への2024年の監督指導の結果です。違反が疑われる事業場を選んで調べた数です。実習生以外の働き手への違反も含みます。

集めるのは時間と契約と費用の記録

1労働時間勤怠の記録と36協定(残業の上限を決める労使の協定)。上限は原則、月45時間・年360時間
2雇用契約働く人が分かる言葉で書いた契約書と、賃金の記録
3来日の費用渡航費、ビザ、健康診断などを誰が払ったか。働く人に払わせないのが原則
4身分証明書パスポートを会社が預かっていないか。預かるなら本人だけが開けるロッカーを使う
5答える記録をもとに質問票に答え、求められたら書類を取引先に出す
農林水産省「食品企業向け人権尊重の取組のための手引き 参考資料編」(2023年12月)をもとに作成

54万円技能実習生が来日前に、母国の送出機関(働き手を日本へ送り出す機関)などに払った費用の平均(54万2,311円)。来日前に借金をした人は約55%

出入国在留管理庁「技能実習生の支払い費用に関する実態調査」(2022年7月)。厚生労働省「育成就労制度の概要」から

手引きは、費用のための借金が債務労働につながるおそれがあるとしています。債務労働は、借金を返すために辞められなくなる強制労働の一つです。

技能実習は2027年4月に育成就労へ

技能実習は、技能を母国に伝える国際貢献を目的にしてきました。代わりにできる育成就労は、人手が足りない分野で人を育て、確保することを目的にします。

2027年4月1日育成就労が始まる。すでに来日している技能実習生は、認定された計画のまま続けられる

出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」

送出機関が本人から取れる費用は、月給の2か月分までになります。超える分は、受け入れる会社か監理支援機関(受け入れる会社を支える、国の許可を受けた団体)が負担します。一定の条件のもと、本人の希望による転籍(職場を移ること)も認められます。

米国とEUは強制労働の品を締め出す

米国では2022年6月21日から、UFLPA(ウイグル強制労働防止法)による取り締まりが始まりました。中国の新疆ウイグル自治区で一部でも作られた品は、輸入できないものとみなされます。覆すには、輸入する会社が明白な証拠を出します。

EUでは2027年12月14日から、強制労働で作られた品をEUで売ることも、EUから輸出することもできなくなります。会社の大きさは問いません。

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