更新日 2026年11月1日

現場のリアル|海運・EUの制度

EU ETSに海運が加わり、欧州向けの運賃に追加料金

2024年から、EUの排出量取引制度(EU ETS)に海運が加わりました。船会社は、船が出したCO2の量に応じて排出枠(CO2を出してよい量の権利)を納めます。その費用は、運賃の追加料金として荷主にも届いています。船会社の担当者の作業と、荷主に届くものを順にたどります。

現場のリアル #1499%超初めての納付で納めた割合

まずやること

  1. 運賃の請求書で、EESなど排出枠の追加料金の名前と金額を確かめます。
  2. 出発か到着がEUの港になる荷物の量を、航路ごとに集めます。
  3. 船を借りて燃料を自社で買う契約なら、排出枠の費用の精算の条項を確かめます。

船会社は排出量に見合う排出枠を納める

EU ETSは、CO2を出す権利(排出枠)を売り買いする、EUの制度です。2024年1月から、海運もこの制度の対象になりました。

対象は、総トン数5,000トン以上でEUの港に入る船で、国籍は問いません。EUの港どうしの航海と、港に泊まっている間の排出は、全量が対象です。EUの外の港との航海は、排出の半分が対象です。

排出した年翌年に納める排出枠
2024年報告した排出量の40%
2025年報告した排出量の70%
2026年以降報告した排出量の100%

2026年の排出からは、CO2のほかに、メタンと一酸化二窒素も数えます。

報告書の元は航海ごとの燃料の記録

1記録する航海ごとに、燃料の使用量と排出量を記録する
2まとめる船ごとの記録を、会社全体の報告書にまとめる
3検証を受ける認定を受けた検証機関が確かめる。期限は翌年の3月31日
4納める検証を受けた量に応じて、9月30日までに排出枠を納める
5精算する燃料を買う会社が別にいれば、その会社に費用を求める
欧州委員会「FAQ – Maritime transport in EU Emissions Trading System (ETS)」から作成

排出枠を納める責任は、つねに船会社にあります。ここでの船会社は、船の持ち主か、運航の責任を引き受けた会社です。

船を借りた会社が、燃料を買う契約もあります。その場合、船会社は、借りた会社に費用の払い戻しを求められます。費用を誰が持つかは、契約の条項に書くことが想定されています。

納めなかった会社には1トンあたり100ユーロの罰金がかかり、払っても納める義務は残ります。

99%超初めての納付(2025年)で、船会社が納めた排出枠の割合。納めるべき量に対する割合

欧州委員会「2025 Carbon Market Report」の発表(2025年12月3日)

ONEは2024年1月から運賃に上乗せ

ONE(オーシャン ネットワーク エクスプレス)は、コンテナ船の会社です。日本郵船が38%、川崎汽船と商船三井が31%ずつを出資しています。

ONEは2024年1月から、EU ETSの費用を追加料金として運賃に上乗せしました。かかるのは、出発か到着の港がEUにある荷物です。英国の港は含みません。

2025年1月からは、名前をEES(欧州環境サーチャージ)に改めました。EESは、EU ETSと、船の燃料についてのEUの規則(FuelEU Maritime)の費用を含みます。料金は3か月ごとに見直され、今ある契約にもかかります。

ONEは、追加料金の計算式も公開しています。排出枠の価格に排出量をかけ、船に積んだ量で割る形です。

燃料の規則とIMOの交渉も進む

FuelEU Maritimeは、船が使うエネルギーあたりの温室効果ガスに上限を設ける、EUの規則です。2025年1月から始まりました。燃料をつくる段階から、船で燃やすまでの排出を数えます。

基準は2020年の平均です。2025年に2%、2030年に6%、2050年に80%減らします。

世界の海運のルールは、IMO(国際海事機関、海運を扱う国連の機関)で話し合います。IMOは2023年、2050年ごろまでに国際海運の排出をゼロにする目標を決めました。

燃料の規制などを入れる条約の改正案は、2025年4月に承認されました。しかし同年10月の会合で、採択の審議が1年間中断されました。一部の国が強く反対したためです。

2026年12月初旬採択の審議の再開を見込む。日本は、IMOの基金への拠出をなくす修正案を出している

国土交通省「IMO第84回海洋環境保護委員会(MEPC 84)主な審議結果」(2026年5月7日)

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