更新日 2026年11月1日

現場のリアル|取引の条件

Scope1・2は請求書12か月分と国の係数で出せる

部品や資材を納める会社に、取引先から排出量の問い合わせが届くことがあります。Scope1・2(スコープ1・2)は、自社で燃やした燃料と、買った電気から出たCO2です。手元の請求書から数字を出す手順を、環境省の資料と国が公表する係数でたどります。

現場のリアル #03142.2t工場1つのScope1の例

まずやること

  1. 依頼の中で、対象の年度と、拠点の範囲と、期限を確かめます。
  2. 経理から、電気とガスの請求書を12か月分そろえます。
  3. 灯油、軽油、ガソリンは、購入の記録や給油カードの明細を集めます。
  4. 請求書で、電力会社とガス会社の名前と、契約のメニューを確かめます。

Scope1は燃やした燃料、Scope2は買った電気

環境省は、Scope1を「事業者自らによる温室効果ガスの直接排出」としています。工場のボイラーや社用車で燃やした燃料の分が、これにあたります。Scope2は、他社から買った電気や熱を使った分の排出です。

この分け方は、GHGプロトコル(企業の排出量の数え方の世界共通のルール)に沿っています。集める書類は、次の表のとおりです。

エネルギー見る書類と欄区分
電気検針票や請求書の使用量(kWh)Scope2
都市ガス検針票や請求書の使用量(m³)Scope1
灯油・軽油・ガソリン納品書や給油カードの明細の量(L)Scope1
A重油(ボイラーなど)納品書の量(L)Scope1
LPガス(プロパン)納品書や検針票の量(kgかm³)Scope1

拾うのは金額ではなく、使った量です。係数は、量に掛けるからです。

使った量に国が出す係数を掛ける

計算の式は「活動量×排出係数」です。活動量は、電気や燃料を使った量です。排出係数は、その量1単位あたりに出るCO2の量です。

1量を集める12か月分の請求書から、kWhやLを書き出す
2単位をそろえるLをkl(キロリットル)に、m³を千m³に直す
3係数を引く国の一覧から、燃料ごと、電力会社ごとの値を選ぶ
4掛けて足す燃料の分をScope1、電気の分をScope2にまとめる
環境省「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入ハンドブック」と「算定方法・排出係数一覧」から作成

燃料の係数は、環境省の「算定方法・排出係数一覧」に燃料ごとに載っています。1klあたりで、軽油は2.62トン、ガソリンは2.29トン、灯油は2.50トンです。

電気の係数は、環境省と経済産業省が電力会社ごとに公表します。同じ会社でも、契約のメニューで値が変わります。東京電力エナジーパートナーで、メニュー別の値がない契約の電気は、1kWhあたり0.000452トンです。ほかの電力会社の値も、同じ国の一覧(環境省の「算定方法・排出係数一覧」のページにある電気事業者別排出係数一覧)に、会社ごと・メニューごとに並びます。請求書にある電力会社の名前とメニューで引きます。

都市ガスも、ガス会社ごとの値を使います。東京ガスで、メニュー別の値がない契約は、1千m³あたり2.09トンです。どちらも2025年度の排出量を数えるための値です。

電力会社やガス会社の値が載っていないときは、国が省令などで決めた代替値を使います。電気は1kWhあたり0.000416トン、都市ガスは1千m³あたり2.05トンです。国の一覧には「基礎」と「調整後」の2つの値が並びます。基礎は、電力会社が発電などで出した量から出した値です。調整後は、電力会社が非化石証書などで差し引いた分を反映した値です。取引先の指定がなければ、まず電力会社に自社の契約の排出係数を聞きます。聞けないときは調整後の値を使い、「温対法の調整後排出係数を使った」と書いて返します。環境省のQ&Aも、契約の係数が手に入らないときの暫定の扱いとして、この使い方を挙げています。A重油やLPガスの係数も、燃料の一覧に並びます。前の年度の分を求められたら、その年度用に公表された係数を使います。

ある部品工場の1年分の計算例

工場が1つの会社の2025年度の例です。量は説明のための仮の数字で、係数は国の公表値です。

エネルギー1年の量係数(トン)CO2
電気(東京電力エナジーパートナー)600,000kWh0.000452/kWh271.2トン
都市ガス(東京ガス)50千m³2.09/千m³104.5トン
軽油(フォークリフトとトラック)10kl2.62/kl26.2トン
ガソリン(営業車)5kl2.29/kl11.5トン

142.2トンこの例のScope1(都市ガス、軽油、ガソリンの合計)。Scope2は271.2トンで、合わせて413.4トン

係数は環境省・経済産業省の事業者別排出係数と、環境省の排出係数一覧

無料のシートで計算し根拠を添えて返す

日本商工会議所の「CO2チェックシート」は、無料のExcelのツールです。毎月の使用量と料金を入れると、CO2の量が計算されます。係数は、環境省の制度の値を使っています。

1つのファイルに入れられる電気の係数は、1つだけです。電力会社が違う拠点は、ファイルを分けます。環境省のハンドブックも、まずこうしたシートで主な排出源をつかむよう勧めています。

Scope1とScope2は分けて書き、合計も添えます。取引先に返すときは、対象の年度と、含めた拠点を添えます。使った係数の出どころと、何年度の値かも書きます。請求書がそろわず推計した月があれば、それも伝えます。取引先から見ると、御社の排出は取引先自身のScope3(事業に関わる他社の排出)の一部になります。

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