更新日 2026年11月1日
国は温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)のSHK制度で、温室効果ガスを多く出す事業者に前年度の排出量を毎年度報告させ、事業者ごとに公表しています。自社の排出を把握させ、公表によって削減を促すのが狙いです。対象はエネルギーを原油換算で年1,500キロリットル以上使う事業者などで、2023年度の実績では、工場などを持つ事業者だけで11,933事業者が報告しています。
報告の義務がある会社 全事業所のエネルギー使用量が原油換算で年1,500キロリットル以上なら対象で、省エネ法の定期報告を出していれば基準は同じです。CO2以外のガスをガスごとに年3,000トン以上出す、従業員21人以上の会社も入ります。この3,000トンはCO2換算、つまり温暖化への効き目をCO2の量に直した値です。省エネ法で指定された輸送事業者・荷主も含め、毎年度、前年度の排出量を国に報告します。
取引先に排出量を聞かれる会社 上の基準に届かなくても、使用量から排出量を出して答えられます。何を聞かれているかは「依頼文の読み方」で確かめられます。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 2026年度報告(済) | 2025年度の実績から、ごみ焼却の廃熱を使った側はその排出を計上しなくてよくなった |
| 2026年11月27日 | 熊本地震で報告できなかった特定事業所排出者、つまり工場などを持つ事業者の、延長後の期限。もとは7月31日 |
| 2027年3月31日以後に終わる期間 | この制度の値をSSBJ基準の開示に使う扱いの適用が始まる |
| 2027年4月1日〜6月30日 | 特定輸送排出者にあたる輸送の事業者が、2026年度の実績を2027年度報告として出す |
| 2027年4月1日〜7月31日 | 工場などを持つ事業者が2027年度報告を出す。森林や木材が蓄えた炭素も、初めて任意で報告できる |
報告の義務がある会社
取引先に排出量を聞かれる会社
Q 子会社も報告するのですか。
A はい。親会社とは別に、法人ごとに判定し、報告します。
Q フランチャイズチェーンの本部は、加盟店の分も数えますか。
A 数えます。加盟店の事業所での活動も、本部の活動とみなして判定します。
Q SSBJ基準の開示には、どの排出量を使いますか。
A 基礎排出量です。クレジットなどを差し引いた調整後排出量は使わないと、SSBJの実務対応基準第1号が決めています。
制度の根拠 SHK制度は、温対法(平成10年法律第117号)の第26条以下にもとづく「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」の通称です。2005年の法改正で導入され、2006年4月1日に始まりました。所管は環境省と経済産業省です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何が | 温室効果ガスの排出量を算定し、事業を所管する大臣に報告する義務 |
| 誰に | 排出の多い事業者。法律上は特定排出者と呼び、国と地方公共団体の事務も含む |
| 対象のガス | エネルギー起源CO2、非エネルギー起源CO2、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素 |
| 公表 | 環境大臣と経済産業大臣が、報告された排出量を事業者別などに集計して公表する |
| 罰則 | 報告をしない、またはうその報告をすると20万円以下の過料(法第75条) |
エネルギー起源CO2は燃料や電気、熱を使って出るCO2で、それ以外のCO2はセメントの製造や廃棄物の焼却などで出ます。HFCとPFCはフロン類の一部で、冷媒や半導体の製造に使われます。
直近の集計は2023年度の実績で、2025年11月20日に公表されました。工場などを持つ特定排出者の排出量の合計は5億6,058万トン、輸送の特定排出者は2,842万トンでした。どちらもCO2に換算した量です。
特定排出者の判定 判定の基準は温対法施行令第5条に定められ、法人の単位で判定します。特定事業所排出者のエネルギーの基準はエネルギー起源CO2に、3,000トンの基準は非エネルギー起源CO2、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素にかかります。
輸送の区分には、量の基準がある者もいます。省エネ法の認定管理統括荷主などは、輸送させる貨物が年3,000万トンキロ以上の場合に対象です。認定管理統括貨客輸送事業者などは、輸送能力の合計が300両以上の場合に対象です。フランチャイズチェーンの本部の扱いは法第26条第2項によります。
特定事業所は、事業者全体の報告に加えて、事業所ごとの内訳も報告します(施行令第6条)。
| 特定事業所になる事業所 | 基準 |
|---|---|
| エネルギーを使う事業所 | その事業所のエネルギー使用量が、原油換算で年1,500キロリットル以上 |
| その他のガスを出す事業所 | その事業所のガスごとの排出量が、CO2換算で年3,000トン以上 |
毎年度の流れ
| 時期 | 手続き |
|---|---|
| 前年度 4月〜翌3月 | 排出量を把握する。4ガスは前年の1〜12月 |
| 初めて電子で出す前 | EEGSの使用届出(温対法様式第4)を出し、ログインIDを得る |
| 4月1日〜6月30日 | 特定輸送排出者が、省エネ法の定期報告書を出す |
| 4月1日〜7月31日 | 特定事業所排出者が、報告書を出す。権利利益の保護の請求も同時に出す |
| 報告の後 | 事業所管大臣が集計し、環境大臣と経済産業大臣に通知する |
| 公表 | 両大臣が、事業者別、業種別、都道府県別に集計して公表する |
根拠は温対法第26〜29条です。災害などで大臣が期限を延ばした場合は、その期限までに報告します。熊本地震の延長では、延びた期限までに報告すれば、行政上と刑事上の責任は問われません。
EEGS 正式名称は「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム」です。省エネ法と温対法の報告を、関係するすべての省庁に同時に出せます。2022年度の報告からは、原則としてEEGSを使うことになっています。EEGSで出せない場合は、書面を送るか持参します。使用料はかかりません。使用届出は紙で出し、届いたアクセスキーでログインIDを発行します。GビズIDがあれば、届出をシステムから出せます。
報告で求められる5つの作業
省エネ法の定期報告に書いたエネルギー起源CO2は、温対法の報告とみなされます(法第34条)。両方のガスがある事業者は、省エネ法の定期報告書に温対法の報告書を添えて出します。事業を2つ以上行う事業者は、それぞれを所管する省庁の窓口すべてに同じ報告書を出します。省エネ法の報告は、経済産業省にも出します。
権利利益の保護の請求は、公表されると競争上の地位などが害されるおそれがある場合に行います。大臣は、請求から30日以内に認めるかどうかを決めます。この期間は、さらに30日まで延ばせます(法第27条)。
2026年度報告からの廃熱と森林の見直し 2026年1月21日に算定の省令が、2月12日に報告の命令が改正され、どちらも2026年4月1日に施行されています。改正は2点で、適用の始まる報告年度が違います。
| 見直し | 内容 | 適用 |
|---|---|---|
| ごみ焼却の廃熱 | 廃熱の供給を受けて使った側は、その排出を計上しなくてよい | 2026年度報告(2025年度の実績)から |
| 森林と木材の炭素 | 森林の吸収量や木材に蓄えた炭素の量を、任意で調整後排出量に反映できる | 2027年度報告(2026年度の実績)から |
廃熱の扱い 清掃工場などで廃棄物を焼いた廃熱は、蒸気や温水として近くの工場などに売られています。改正前は、売る側が焼却の排出を計上し、買う側も使った熱量に産業用蒸気の係数などをかけて計上していました。改正後は、売る側だけが焼却の排出を全量計上します。対象は、廃棄物の焼却の廃熱を回収した蒸気、温水、冷水です。
森林等炭素蓄積変化量 報告できるのは特定事業所排出者だけで、次の2つの活動が対象です。
| 活動 | 報告できる者 | 算定の式と主な条件 |
|---|---|---|
| 森林の経営 | 自ら所有する森林で森林経営活動をする者。他の特定事業所排出者の森林を、中長期の受委託契約で管理する者 | 蓄積の変化量 × 国の係数 × 44/12。増加量は森林経営計画などがある森林に限り、計画書の添付が必要。伐採による減少も算定する |
| 木材製品の利用 | 木材を使った建物、工作物、家具などを所有する者。消耗品は除く | 使った木材の量 × 国の係数 × 44/12。対象は合法性を確認した国産材など。新築などで取得したものに限る |
44/12は、炭素の量をCO2の量に直す係数です。国の係数は、環境省、経済産業省、農林水産省が公表します。森林は、原則として自ら所有するすべてが算定の範囲です。市町村の単位で範囲を選ぶこともできます。J-クレジットに登録した森林は、認証の対象期間中は範囲から外します。木材の場合は、報告した建物などを自ら台帳で管理します。建て替えや廃棄をしたら、過去に報告した量を差し引きます。
報告は任意です。ただし、一度報告した特定事業所排出者は、翌年度以降も毎年度の報告が必要です。報告の様式第1には、第5表の9と第5表の10が新しく設けられました。
同じ2027年度報告から、自ら創出した森林吸収のJ-クレジットも、自らの調整後排出量の調整に使えます。他者の吸収への貢献や販売した木材の炭素は、様式第2に任意で書けるようになりました。2026年度の報告には、森林の欄がない従来の様式を使います。新しい様式は、2027年度以降の報告用として公開されています。
算定の方法 排出量は、燃料や電気の使用量、廃棄物の焼却量などの活動量に、排出係数をかけて求めます。ガスごとの量には、CO2を1として温暖化への影響の大きさを表す地球温暖化係数をかけ、CO2の量にそろえます(法第26条第3項)。2024年度の報告から、次の値に更新されました。HFCとPFCは、物質ごとに係数が分かれています。
| ガス | 2024年度報告からの値 | それまでの値 |
|---|---|---|
| CO2 | 1 | 1 |
| メタン | 28 | 25 |
| 一酸化二窒素 | 265 | 298 |
| 六ふっ化硫黄 | 23,500 | 22,800 |
| 三ふっ化窒素 | 16,100 | 17,200 |
エネルギー起源CO2の算定の式は、施行令第7条に定められています。
| 使ったもの | 算定の式 |
|---|---|
| 燃料 | 使用量 × 単位発熱量 × 発熱量あたりの排出係数 |
| 都市ガス | 使用量(千立方メートル)× 排出係数 |
| 他人から供給された電気 | 使用量(キロワット時)× 排出係数 |
| 他人から供給された熱 | 使用量(ギガジュール)× 排出係数 |
排出係数の選び方 電気、都市ガス、熱の排出係数は、料金メニューごとの係数があれば、その値を使います。公表された係数がない場合は、国が公表する代替値を使います。2026年度の報告では、2024年度の実績にもとづく電気事業者別の係数を使います。この一覧は2026年1月9日に公表され、8月3日まで追加と更新がありました。
基礎排出量と調整後排出量
| 排出量 | 係数 | 報告する者 |
|---|---|---|
| 基礎排出量 | 電気と熱は基礎排出係数で計算する | すべての特定排出者 |
| 調整後排出量 | 電気と熱は調整後排出係数で計算する | 特定事業所排出者 |
差し引けるクレジットには、J-クレジットとJCMのクレジットなどがあります。無効化は、取得したクレジットを自社の排出量の調整に充て、二度と使えない状態にする手続きです。2025年度の報告からは、事業者単位の報告で、エネルギー起源CO2を燃料の使用による直接排出と、電気・熱の使用による間接排出に分けます。
非化石証書の分は、2025年度の報告から、基礎排出量と調整後排出量の両方に反映します。差し引けるのは、電気事業者から小売供給された電気の使用によるCO2の量までで、熱の証書は熱の使用によるCO2の量までです。差し引く量は、証書の量に全国平均係数と補正率をかけて求めます。2026年度の報告に使う全国平均係数は、1キロワット時あたり0.000423トンです。
2024年以降の主な改正
| 施行 | 主な変更 | 適用の始まり |
|---|---|---|
| 2024年4月 | 算定の対象活動と排出係数を全面的に見直し。都市ガスと熱にも事業者別の係数 | 2024年度報告から |
| 2025年4月 | 直接と間接の区分。基礎排出係数の変更。CO2を回収して燃料にした分の控除 | 2025年度報告から |
| 2026年4月 | 廃熱の係数を0に | 2026年度報告から |
| 2026年4月 | 森林等炭素蓄積変化量の任意報告 | 2027年度報告から |
JCMのクレジットは、2025年4月1日に施行された法改正で「国際協力排出削減量」として法律に位置づけられました。施行の時点ですでにあったJCMクレジットは、国際協力排出削減量とみなされます。
| 施行 | 主な変更 | 適用の始まり |
|---|---|---|
| 2009年4月 | 事業者単位の報告へ。調整後排出量の報告を追加 | 施行時から |
| 2015年4月 | 三ふっ化窒素を追加。地球温暖化係数を変更 | 2016年度報告から |
| 2015年5月 | 電子報告システムでの報告ができるようになる | 施行時から |
| 2022年4月 | 報告された排出量を、開示請求の手続きなしにすべて公表 | 2022年度報告から |
ほかの制度との関係
| 制度 | SHK制度との関係 |
|---|---|
| 省エネ法の定期報告 | 1,500キロリットルの基準は同じ。定期報告のエネルギー起源CO2は温対法の報告とみなす |
| GX-ETS | 対象はCO2の直接排出だけ。他者に供給した電気・熱の分を含み、小さな排出源の裾切りはない。登録確認機関の確認がある |
| SSBJ基準 | SHK制度の方法で測った排出量を、Scope1・2の開示に使う場合の扱いを実務対応基準第1号が定める |
| フロン法の算定漏えい量報告 | 業務用の冷凍空調機器からのフロン類の漏えいを報告する別の制度。報告する者や算定の範囲が違う |
GX-ETSとの違い GX-ETSは、改正GX推進法にもとづく排出量取引制度です。経済産業省の2026年4月の説明会資料は、SHK制度との違いを比べています。SHK制度には、第三者による確認がなく、クレジットの使用に上限もありません。GX-ETSでは、クレジットは排出量の10%までです。
GX-ETSでは、事業所内の割当ての区分ごとに排出量を報告します。そのため、SHK制度の区分よりも細かく、CO2を分けて算定する場合があります。2027年度の届出に必要な情報として、SHK制度で報告した事業所ごとのCO2排出量が挙げられています。早期の削減を勘案する場合の根拠です。
SSBJ基準での使い方 SHK制度の対象企業は、SSBJの気候関連開示基準の第49項ただし書きを選べます。選ぶと、SHK制度の方法で測った排出量を開示に使えます。2026年6月11日公表の実務対応基準第1号は、直接排出と間接排出を基礎排出量の一部として定義し、その場合の量を次のように定めています。
| 開示する項目 | 使うSHK制度の量 |
|---|---|
| スコープ1 | 基礎排出量のうち、電気・熱の使用によるエネルギー起源CO2を除いた直接排出の量 |
| スコープ2のマーケット基準 | 基礎排出量のうち、電気・熱の使用によるエネルギー起源CO2。間接排出にあたる |
| スコープ2のロケーション基準 | 間接排出の活動量に、環境大臣と経済産業大臣が公表する平均的な排出係数をかけた量 |
どの量も、期間の調整のほかには追加の調整をしません。SHK制度は年度で数えるため、決算の期間と違う場合は期間の調整をします。適用は、2027年3月31日以後に終わる年次報告期間の開示からで、それより前の期間に適用することもできます。有報での扱いは「SSBJ基準の解説」にまとめています。
制度の見直しの場 制度の見直しは、環境省と経済産業省の算定方法検討会と制度検討会で議論されています。
対象の条件の一覧
| 条件 | 対象か |
|---|---|
| 全事業所のエネルギー使用量の合計が、原油に換算して年1,500キロリットル以上 | 対象。特定事業所排出者 |
| CO2以外のガスなどが、ガスの種類ごとにCO2換算で年3,000トン以上で、常時使用する従業員が21人以上 | 対象。特定事業所排出者 |
| 省エネ法で指定された貨物・旅客・航空の輸送事業者と荷主など | 対象。特定輸送排出者 |
1,500キロリットルの基準は、省エネ法で定期報告を出す事業者の要件と同じです。2023年度の実績では、工場などを持つ特定排出者は11,933事業者、輸送の特定排出者は1,346事業者でした。特定事業所排出者は工場などを持ち報告の義務がある事業者、特定輸送排出者は報告の義務がある輸送事業者や荷主などです。調整後排出量は、基礎排出量から、無効化したクレジットや証書の量などを差し引いた量です。
熊本地震の延長 2026年8月7日に、令和八年熊本地震を特定非常災害に指定する政令が施行されました。特定事業所排出者の報告の期限は、もとの7月31日から2026年11月27日に延びています。
廃熱と森林の適用の例 清掃工場の廃熱を使っている事業者は、2025年度の実績から計上しなくてよく、廃熱の係数は0です。ほかの産業用蒸気は、これまでどおり係数をかけて計上します。社有林の吸収量は、2026年度の報告には入れられません。算定できるのは2026年度の活動の実績からで、報告は2027年度からです。
| 時期 | 項目 | 状態 |
|---|---|---|
| 未定 | 2024年度の実績の集計結果の公表 | 2026年11月1日時点で、制度のサイトのお知らせに掲載はない |
| 未定 | 2025年度の実績にもとづく、2027年度の報告用の電気・ガス・熱の事業者別の係数 | 公表日は未定 |