更新日 2026年11月1日

制度の解説|排出量取引

GX-ETS(排出量取引制度)の義務化

国は2026年度から、CO2を多く出す事業者に、出した量と同じ量の排出枠を毎年度持つよう義務づけました。排出枠はCO2を出してよい量を表す権利で、国が割り当て、事業者どうしで売り買いもできます。排出に値段をつけ、減らした会社ほど負担が軽くなる形で削減を進める仕組みで、対象は自社で燃料などを燃やして出すCO2の直接排出が年10万トン以上の事業者です。鉄鋼、化学、セメント、発電などの業種が中心で、300〜400社程度と見込まれています。

制度の解説GX-ETS

法人で年10万トンに届くか

事業者目安備え
義務がかかる会社法人のCO2の直接排出が、前3年度の平均で年10万トン以上。工場ごとでなく法人全体で数え、他者に売る電気・熱の分も入れる。排出量を国に報告させる温対法や、省エネ法の報告の数字が手がかりになる口座を開き、登録確認機関と契約する
義務がない会社前3年度の平均が上の量に届かない。グループ全体で届いても、各社単独で届かなければ対象外判定は毎年度、前3年度の平均でやり直す。届きそうなら毎年数え直す
クレジットを作る会社J-クレジットなど、国が認証した削減量や吸収量を作っている買い手が使える期限に合わせて、売る時期を考える

両方に当たる会社は、まず義務の側の手続きを済ませます。

無償の枠は年々減り、排出量は第三者が確かめる

  1. 無償でもらえる枠は年々減り、足りない分はお金で埋めます。過去の排出量を基準に配る分は毎年度1.7%ずつ減り、不足は市場で枠を買うか、クレジットで一部を差し引きます。期限までに持てなかった分には負担金がかかります。
  2. 届け出る排出量は、事前に第三者の確認を受けます。確かめるのは国に登録した登録確認機関で、温対法の報告にはない手続きです。
  3. 移行計画には削減目標と脱炭素への投資をまとめ、毎年度出します。国が公表するのは前年度の排出量と2030年度の目標で、投資の計画は個別には公表されません。

2026年度分の枠は2028年1月末までに

時期すること
2026年度(済・実施中)制度が始まった。事業者は排出量の算定を始め、9月末に前3年度の平均排出量の届出と移行計画の提出を済ませた
2027年3月31日まで事業者が登録確認機関と契約する。算定がすでに始まっているため、国はこの時期までの契約を勧めている
2027年9月30日事業者が、割当ての基準で計算した2026・27年度分の排出目標量と、2026年度に実際に出した排出実績量を、確認を受けて出す。2027年度の移行計画も出す
2027年11月30日国が2026・27年度分の排出枠を割り当て、2026年度分として持つべき量を知らせる
2028年1月31日事業者が2026年度分の排出枠を口座に持つ期限。足りない分には負担金がかかる

排出枠を持つ会社、クレジットを作る会社がすること

義務がかかる会社

  1. 2023〜2025年度のCO2の直接排出を法人ごとに足し、平均が対象の量に届くかを確かめます。
  2. GビズIDを取り、届出と口座の手続きをする国のシステムERMSで、排出枠を持つための口座を1社につき1つ開きます。
  3. 2026年4月から始まった排出の算定を、業種の水準で配る分と、過去の排出量で配る分に分けて進めます。
  4. 確認を頼む登録確認機関を選び、契約します。

クレジットを作る会社

  1. 対象の会社が差し引けるのはJ-クレジットやJCMのクレジットで、上限は各社の実排出量の10%です。
  2. 買い手がクレジットを無効化、つまり使ったことにして二度と使えなくする手続きを、報告する年度の6月末までに済ませれば、その年度に反映できます。売るなら、この期限が目安です。

買った電気、子会社、余った枠

Q 買った電気の排出も、排出枠を持つ量に入りますか。
A 入りません。算定の対象は直接排出です。一方、移行計画には、買った電気や熱による間接排出も書きます。

Q 子会社とまとめて届け出られますか。
A できます。発行済株式の全部を持つ会社など、密接関係者と共同で届け出られます。密接関係者は、子会社、関連会社、兄弟会社のうち、自らも届出義務がある会社です。

Q 排出枠が余ったら、翌年度に使えますか。
A 使えます。余った枠は翌年度に持ち越せ、保有量が決まる前から市場で売ることもできます。

細かい決まりGX推進法の条文、割当ての計算、上限価格と負担金

法律と所管 根拠はGX推進法、正式には「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」です。2025年6月4日に改正法(令和7年法律第52号)が公布され、排出量取引の部分は2026年4月1日に施行されています。

項目内容
何が排出枠の保有の義務、排出量の届出と報告、移行計画の提出
所管経済産業大臣。割当ての事務と市場の運営はGX推進機構

GX推進機構は正式名を脱炭素成長型経済構造移行推進機構といい、同じ法律にもとづく法人です。2023年度から2025年度までは、自主参加のGXリーグで排出量取引が試行されていました。

対象の判定の根拠 判定を工場ごとでなく法人ごとに行う理由として、国の資料は、省エネ法や温対法との整合性などを挙げています。

判定の要素基準根拠
単位事業者。法人ごと法第33条
数える排出CO2の直接排出。他者に売る電気・熱の分も含む。小さな排出源の裾切りはない施行令第1条、国の説明資料
期間届出年度の前3年度の平均。2026年度は2023〜2025年度の平均施行規則第4条
しきい値年度平均排出量が10万トン以上施行令第2条
設立が新しい会社前々年度の設立なら2年度の平均。前年度の設立なら前年度の量施行規則第4条
クレジット判定の量には、カーボン・クレジットによる相殺を反映しない国の説明資料

判定に使う年度平均排出量は、登録確認機関の確認の対象外です。密接関係者との共同の届出は法第33条第4項、密接関係者の範囲は施行規則第14条によります。共同の届出では、一体で行う投資の内容も書きます。

手続きの根拠 手続きはERMSで行います。

手続き中身根拠
届出年度平均排出量と排出目標量など法第33条
移行計画毎年度提出し、国がインターネットで公表する法第73条
実績の報告確認を受けた排出実績量法第35条
口座の開設法人等保有口座を1社につき1つ法第48条
排出枠の保有排出実績量と同じ量を口座に持つ法第36条

毎年度の原則の流れ T年度は排出を数える年度、T+1年度はその翌年度です。

時期手続き
T年度 4月〜翌3月CO2の直接排出を算定する
T年度 9月末確認を受けた排出目標量などを届け出る。移行計画を出す
T年度 11月末国が排出枠を無償で割り当てる
T+1年度 9月末確認を受けた排出実績量を報告する
T+1年度 11月末国が保有すべき排出枠の量を通知する
T+1年度 1月31日通知された量の排出枠を口座に持つ。国は口座の枠を減らして償却する
T+1年度 2月1日以降足りない分は上限価格の1.1倍の負担金を徴収

根拠はGX推進法と、施行規則第10・15・16・21条です。枠の過不足は、保有量が決まる前から市場で売買できます。余った枠は、翌年度に持ち越せます。

初年度の2026年度だけの扱い

時期手続き原則との違い
2026年1月5日登録確認機関の登録の受付施行前から受付
2026年4月1日2026年度の上限・下限価格原則は年度の開始前に決定。2026年度分は附則でこの日に定めた
2026年9月末(終了)年度平均排出量の届出、移行計画移行計画の研究開発の記載は不要
2026年度中確認原則は届出・報告の前に確認。2026年度は確認が必要な手続きがない
2027年度から研究開発による追加割当て2026年度は適用なし
2027年9月30日排出目標量などの届出原則は届出年度の9月末。2年度分をまとめる
2027年11月30日割当て原則は届出年度の11月末
2028年1月31日2026年度分の排出枠の保有期限原則どおり

初年度の扱いの根拠は、改正法の附則第4条と、改正施行規則の附則第2・3条です。届出と報告の期限は、災害など、やむを得ない理由があり大臣が承認すれば延ばせます。延長の上限は、届出が1年、報告が2か月です。

罰則

違反罰則根拠
届出をしない、うその届出50万円以下の罰金法第143条
実績の報告をしない、うその報告50万円以下の罰金法第143条
移行計画を出さない、うその記載20万円以下の過料法第148条

排出枠の割当ての計算 国は届出の内容を、経済産業大臣が定める割当てのルールである実施指針に照らして審査し、排出枠を無償で割り当てます(法第34条)。割当量の計算は、次の2つの方式が基本です。

方式計算対象
ベンチマーク方式、BM基準活動量 × 目指すべき排出原単位鉄鋼、化学、セメント、発電など20業種
グランドファザリング方式、GF基準排出量 ×(1 − 削減率 × 経過年数)BMの対象外の排出源

BMは、同じ業種の中で製品あたりの排出を比べる方式で、20業種は主務省令で定められています。BMの水準は、業種内の上位50%から始まり、5年後には上位32.5%の水準まで引き下げる設計です。GFは過去の排出量を基準に、毎年度1.7%ずつ割当量を減らします。基準の期間は、どちらも2023〜2025年度の3年度です。割当量は、次の事情で増減します。

勘案事項内容
早期の削減制度開始前に基準を超えて減らした量を、基準排出量に加える。GFの排出源が対象
カーボンリーケージ海外移転のおそれがある業種で、枠の調達コストが一定水準を超えると、不足分の一定割合を追加
研究開発への投資前年度のGX関連の研究開発費に応じて、不足分の範囲で追加。2027年度から適用
活動量の変動事業所の新設・廃止や生産量の大きな増減があれば調整

登録確認機関による確認の範囲と水準 登録確認機関は経済産業大臣の登録を受けて確認の業務を行います(法第58〜60条)。登録には、適合性評価の機関に関する国際規格などに合うことが求められ、登録の有効期間は5年です。確認の方法について、国の資料は、温室効果ガスの検証の国際規格ISO 14064-3と、サステナビリティ保証の国際基準ISSA 5000を例に挙げています。

届け出る量確認
BM・GFによる排出目標量限定的水準の確認
早期の削減を勘案した量合意された手続
排出実績量限定的水準の確認
年度平均排出量、勘案事項による調整量、移行計画不要

確認報告書の結論は、無限定、限定付、否定的の3種類です(施行規則第13条)。重要な手続きができなかった場合は、結論を出さない旨と理由を書きます。事業者は届出や報告に、この報告書を添付します。排出量取引制度ポータルサイトの一覧には、2026年10月13日までに登録された15機関が載っています。

移行計画の中身と、公表される項目 提出先は、経済産業大臣と事業を所管する大臣です。

記載事項公表
前年度のCO2排出量。直接排出と間接排出公表する
CO2排出量の目標2030年度の値のみ公表する
投資などの計画の内容と期待される効果個別には公表しない
研究開発の内容。2026年度は記載不要公表する
その他の取組み公表する
前年度の計画との比較。2026年度は記載不要公表しない

目標の欄には、2026年度から2030年度までの各年度の見通しを書きます。投資計画は、設備投資の案件ごとに内容、金額、工場、期間、削減効果を書きます。

排出枠の価格の上限・下限と負担金 上限と下限は、どちらも経済産業大臣が毎年度、その年度が始まる前に定めます。

仕組み内容根拠
参考上限取引価格上限の基礎となる価格。産業構造審議会の意見を聴いて定め、告示する法第39条
上限価格による支払い取引が難しいと大臣が告示したときに限り、不足分に上限価格をかけた額を払えば枠を持つとみなす法第40条
調整基準取引価格。これが下限市場の平均価格が一定期間これを下回ると、GX推進機構が枠を買い入れられる法第116〜117条
未償却相当負担金2月1日以降、持っていなかった量に上限価格の1.1倍をかけた額を徴収法第41条

上限価格での支払いが認められるのは、施行令第6条の場合です。市場の平均価格が上限を一定期間上回り続けた場合や、上限以下の売り注文がとても少ない場合です。災害などで取引が難しい場合も含まれます。支払える量は、通知された保有量が割当量を上回る分までです。機構が下限で買い入れた枠は、決まった基準に従って事業者に売り渡します。2026年度の金額は経済産業省の告示で定められています。

ほかの制度との関係

制度GX-ETSとの関係
省エネ法の定期報告、温対法のSHK制度SHK制度は温室効果ガスの排出量を国に報告する制度。GX-ETSはCO2の直接排出に限り、第三者の確認がある
J-クレジット、JCM無効化した量を排出実績量から差し引ける。上限は実排出量の10%
化石燃料賦課金同じ法律の制度。2028年度から化石燃料の輸入者などに課す
発電の有償割当て2033年度から、排出の多い発電事業者に排出枠を有償か無償で割り当てる
自治体の条例排出量の報告などを条例で定めることを妨げない(法第76条)

省エネ法で国に出した報告書の一部は、GX-ETSの届出に添付します(施行規則第10条)。

海外の制度との違い 海外の制度とは、対象の決め方が違います。海外の捕捉率は2022年の値です。

EU英国韓国日本
単位設備設備事業者事業者
規模直接排出でおおむね2万5千トン以上直接排出でおおむね2万5千トン以上直接・間接で12万5千トン直接排出で10万トン
国内排出の捕捉率40%27%79%60%程度の見込み

合併・取引・訂正 年度の途中で合併や事業の譲渡をしたら、その年度は、合併後の会社や事業を引き継いだ会社が義務を負います。数える排出は、消えた会社や引き継いだ事業の分に限られます(法第44条)。

排出枠は、持っている者の間で取引できます。ただし、投機的な取引の対象にしてはならないと定められています(法第38条)。届け出た内容に誤りが見つかったら、次の届出のときに訂正を報告します。重大な変更なら、訂正にも登録確認機関の確認が要ります(施行規則第19条)。

市場価格が下限を下回って低迷する場合について、国の資料は二つの対応を挙げています。GX推進機構がリバースオークションで枠を買い入れることと、割当基準の強化の検討です。

対象の規模と業種 判定は法人ごとで、対象は300〜400社程度と見込まれています。対象の会社は、国内の温室効果ガス排出の60%近くを占めると見込まれています。対象事業者の排出の90%を、鉄鋼、化学、セメント、発電など20業種が占めます。

条件対象か
工場ごとでは10万トンに届かないが、法人全体で届く対象。判定は法人ごと
他者に売る電気・熱の分を含めると10万トンに届く対象。売る分も数える
グループ全体では届くが、各社単独では届かない対象外。各社単独の量で判定する

2026年度の手続き 2026年度に確認が必要な手続きはありません。事業者は2026年4月1日に排出実績量の算定を始め、2026年9月末に前3年度の平均排出量を届け出て、移行計画を出しました。国は2026年度から、登録確認機関との契約を進めるよう勧めています。2026年4月から排出実績量の算定が始まっているためです。最初の届出の期限は、2026・27年度分をまとめて届け出る2027年9月30日です。

無償割当ての絞り込みと負担金 業種ごとの水準で配るBMの分も、5年かけて厳しくなります。クレジットで差し引けるのは実排出量の10%までで、期限までに持てなかった分には上限価格の1.1倍の負担金がかかります。上限価格・下限価格は、国が毎年度決める排出枠の価格の上限と下限です。

クレジットの無効化の期限 クレジットは、報告する年度の6月末までに無効化すれば反映できます。4月1日から6月30日の無効化分は、前の年度か当年度のどちらか一方にだけ反映できます。

施行後の検討 施行後5年以内、2031年3月までに施行状況を検討します。検討の中身は未定です。

価格の金額、市場の開設、発電の入札

時期予定状態
2027年3月まで2027年度の排出枠の価格の上限・下限を定める定めることは法律で決まっている。金額は告示で示される
2027年11月ごろ割当てと市場の運営を担うGX推進機構の取引市場が開く国の資料の図による目安。開設日を定めた条文は見当たらない
2033年度発電事業者への、入札による有償割当てが始まる入札の詳細は別の法律で定めることになっており、未定