更新日 2026年11月3日
みずほフィナンシャルグループは、SSBJ基準(日本のサステナビリティ開示の基準)への準拠を表明し、投融資先の排出量を約10億トンと数字で示しました。一方で、気候が将来のお金に与える影響は数字で示さず、外部の保証も受けていません。
良い点は、準拠の表明、投融資先の排出の示し方、数字の確かめ方の3つです。
基準に準拠した。2026年2月の改正府令のただし書きを使い、SSBJ基準に「準拠して作成しております」と書きました。同じ銀行のMUFGは、同じ時期の有価証券報告書で「すべての定めには準拠していません」としています。
投融資先の排出を、測った範囲まで書いた。Scope3のカテゴリー15(投融資先の排出)を1,012.89Mt-CO2e(CO2換算で約10億トン)と示し、資産運用は運用資産残高の81.7%、商業銀行はグロス・エクスポージャー(与信の総額)の89.6%を測ったと書いています。全体のどれだけを測ったかが分かるので、数字の重みを読み手が判断できます。
数字の確かめ方を手順で書いた。外部から得たデータは社内の「FE計測作業マニュアル」で確かめ、サンプルの確認や増減の分析をし、第三者が検証したデータがあればそれを優先する、という手順を並べています。保証はありませんが、社内でどう確かめたかは読めます。
足りないのは、将来の財務影響の数字、シナリオ分析の金額、外部の保証の3つです。
将来の財務影響を数字で示さない。炭素価格などの不確実性が「極めて高い」として、「定量的に捉えることは有用ではありません」と書き、文章の説明にとどめています。SSBJ基準はできれば金額で示すことを求めており、同じく準拠したキリンはリスクごとに金額を出しています。
シナリオ分析の結果が言葉だけ。電力や鉄鋼など9セクターの与信を分析しましたが、結果は「単年度の平均与信コストは期間損益の範囲内」という言葉で、与信コストの金額は載っていません。MUFGは同じ種類の分析で、累積与信費用を「5,500億円程度」と金額で示しています。
外部の保証がない。指標の注記には「第三者によって認証されたものではありません」とあります。準拠したキリンは保証を受けており、SSBJに触れた110社で保証を受けた会社には、ふくおかフィナンシャルグループや群馬銀行など銀行のグループも入っています。
| 項目(SSBJが求めること) | この会社 | 評価 |
|---|---|---|
| 時間軸 短期・中期・長期が何年かを決めて書く | 短期は1年以下、中期は1年超5年以下、長期は5年超 | ○ |
| 財務への影響 気候が売上・費用・資産に与える影響を、できれば金額で書く | 当期は「重大な影響はありません」。将来は数字を出さず、文章で説明 | △ |
| シナリオ分析 気温が上がる道筋をいくつか置いて、会社が耐えられるかを見る | NGFS(中央銀行などのネットワーク)の4つのシナリオで9セクターの与信を分析。結果は言葉だけ | ○ |
| Scope1・2 自社が出した温室効果ガスの量を書く | Scope1は0.02Mt-CO2e、Scope2(マーケット基準)は0.05Mt-CO2e | ○ |
| Scope3 取引先や製品の使用まで含めた量を書く(初年度は省略できる) | カテゴリー15(投融資先)だけ。1,012.89Mt-CO2e | △ |
| 移行計画 排出を減らしていく道筋を書く(ある場合) | 「〈みずほ〉のネットゼロ移行計画」を策定。石炭火力発電所向けの与信は2040年度までに残高ゼロ | ○ |
| 産業別の指標 業種ごとに決まった指標を書く(SASBがもと) | SASBで7つの産業を特定。SASBの指標は開示していない | △ |
| 第三者保証 外部の機関が数字を確かめたか | 受けた旨の記載はない | × |
| 経過措置 初年度に使える省略(比較情報、Scope3など)を使ったと書いているか | 比較情報の省略を、根拠の条文つきで書く | ○ |
みずほは、SSBJに触れた110社のうち準拠を表明した2社の1社です。ただし、もう1社のキリンと違い、お金の影響を金額で書いた16社にも、第三者保証を受けたと書いた31社にも入っていません。移行計画を書いた22社には入っています。