更新日 2026年11月3日

開示の事例|2026年3月期の有価証券報告書

フィデアホールディングス、投融資先の排出を18セクターで開示 削減目標は自社の排出だけ

荘内銀行と北都銀行を持つフィデアホールディングスは、投融資先の排出をSSBJ基準を踏まえて18のセクターに分け、データの確からしさの点数まで並べました。ただ、排出の99%超を占める投融資先には削減目標がなく、目標を置いているのは自社のScope1・2だけです。

開示の事例フィデアHD

ここが良い

投融資先の排出を、セクターごとに確からしさの点数つきで出しています。Scope3のカテゴリ15(銀行が融資した先の排出のうち、銀行の持ち分)は、事業性融資の取引先全量を対象に5,267,686t-CO2です。SSBJ基準を踏まえて14分類を18分類に細かくし、セクターごとに排出量、データクオリティスコア(数字の確からしさを1〜5で示す点数)、貸出金残高、件数を並べました。SSBJ基準は銀行に、投融資先の排出を業種ごとに分けて示すよう求めており、その形に沿った表です。

少なく見せない算定のルールを書いています。日銀の業種分類を世界の業種分類に変えるとき、変換先が複数あれば「過少の算定とならないようにするため」排出係数の最も高いものを使う、と注記しています。全体のスコアは3.82で、推計の数字が多いことも隠さずに示しています。

シナリオの結果をお金で示し、対象を広げました。移行リスク(脱炭素の規制や市場の変化で生じる損失)の与信コストは最大6.8億円、物理的リスク(水害などで生じる損失)は最大46.1億円です。物理的リスクの対象は、今回から不動産担保の提供先だけでなく、山形県と秋田県の全法人融資先に広げました。MUFGも移行リスクの与信費用を5,500億円程度と金額で示しており、大手と同じ書き方です。

ここが物足りない

投融資先の排出に、削減目標がありません。目標は自社のScope1・2で、2030年度に2013年度比70%減とネットゼロです。2025年度の自社の排出は3,080t-CO2で、カテゴリ15の5,267,686t-CO2の0.06%にあたります。カテゴリ15は「削減に向け、サステナブルファイナンスに取組む」と書くだけで、数字の目標はありません。MUFGは、カテゴリ15と排出の多いセクターにも目標を置いています。

排出が最も多いセクターが、移行リスクの試算から外れています。18セクターで最も排出が多いのは加工食品・加工肉で、カテゴリ15の約25%を占めます。移行リスクの試算の対象は「電力」「ガス」「石油」の3つで、ここに入っていません。みずほは移行リスクの分析で9つのセクターを見ています。

セクター排出量(t-CO2)移行リスクの試算
加工食品・加工肉1,317,829対象外
電力ユーティリティ1,196,499対象
石油・ガス955,708対象

SSBJ基準への準拠はこれからで、保証と経過措置に触れていません。準拠は「今後」の話で、時期は書いていません。排出量に外部の保証を受けたかも、初年度に使える省略(経過措置)を使ったかも書いていません。カテゴリ15の対象も事業性融資だけで、住宅ローン、自動車ローン、プロジェクトファイナンスは「拡大を検討」の段階です。

SSBJが求めること と この会社

項目(SSBJが求めること)この会社評価
時間軸
短期・中期・長期が何年かを決めて書く
短期5年程度、中期10年程度、長期30年程度○
財務への影響
気候が売上・費用・資産に与える影響を、できれば金額で書く
シナリオの与信コストは最大6.8億円と46.1億円。当期の影響は書いていない△
シナリオ分析
気温が上がる道筋をいくつか置いて、会社が耐えられるかを見る
IEAのNZE2050とIPCCのRCP8.5○
Scope1・2
自社が出した温室効果ガスの量を書く
2025年度3,080t-CO2(2013年度比65%減)。子会社5社を追加○
Scope3
取引先や製品の使用まで含めた量を書く(初年度は省略できる)
カテゴリ1〜15で5,276,736t-CO2○
移行計画
排出を減らしていく道筋を書く(ある場合)
自社の2030年度ネットゼロのロードマップだけ△
産業別の指標
業種ごとに決まった指標を書く(SASBがもと)
セクター別の投融資先の排出は出す。産業別ガイダンスには触れない△
第三者保証
外部の機関が数字を確かめたか
書いていない×
経過措置
初年度に使える省略(比較情報、Scope3など)を使ったと書いているか
書いていない×

110社の中での位置

SSBJ基準に触れた110社のうち、Scope3の数字を書いたのは32社です。「参考にした」段階の26社に限ると9社で、フィデアホールディングスはその1社です。一方、第三者保証に触れた31社には入っていません。

SSBJに触れた110社の一覧

原文

節原文
気候変動への対応「これまでのTCFD提言の枠組みを基礎としつつ、今後はSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan:サステナビリティ基準委員会)基準に準拠した情報開示に取り組んでまいります。」
指標と目標「Scope3(カテゴリ15)の算定・開示にあたっては、SSBJ基準を踏まえ、対象となる炭素関連セクターの範囲を従来の14分類から18分類に拡大(※3)し、より網羅的な開示へと高度化を図る」
戦略「当社グループにおいて移行リスクの影響が大きいセクターとして、気候変動に関連する炭素税導入の影響が大きいと想定される『電力』『ガス』『石油』を選定しました。」

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