ここが良い
- どの年にどの基準を参照したかを書き分けました。「2024年はIFRS S2号、2025年はSSBJの気候基準」と年ごとに書いているので、読み手は開示の拠り所が1年でどう変わったかを追えます。SSBJ基準に触れた110社のうち59社は、名前に触れただけにとどまります。
- 取締役会がどう関わるかを、仕組みと回数で書きました。取締役会はサステナビリティを年間の議題に組み込み、取締役は執行側のサステナビリティ委員会に陪席(同席して聞くこと)しています。委員会は四半期ごとに開き、当期は4回でした。SSBJ基準が求める「誰がどう監督するか」に、形と頻度で答えています。
- 役員報酬の10%を、ESGの指標に結び付けました。短期の業績連動報酬のうち10%を、CDP(気候の取り組みを評価する機関)の評価、売上収益あたりのGHG排出量の削減目標の達成率、社員のエンゲージメント調査の結果で決めます。重みと指標の両方を出しているので、自社で同じ仕組みを考えるときの見本になります。
ここが物足りない
- 有報に排出量の実績がありません。載っているのは、Scope1・2(自社が出した温室効果ガス)を2030年に2018年度比55%減らす目標と、Scope3のカテゴリ11(売った製品の使用)を2021年度比25%減らす目標だけです。SSBJ基準はScope1・2・3の量を書くよう求めています。2024年の排出量に第三者保証を受けたと書いていますが、その数字も当期の数字も有報の中にはありません。
- 時間軸と、リスク・機会の一覧がありません。短期・中期・長期が何年かの決めも、気候のリスクと機会の中身も、気候の節には載っていません。有報は「詳細はウェブサイトに掲載しています」と案内しており、財務への影響を知るには有報の外に出る必要があります。
- シナリオ分析は「見直した」とだけ書いています。2025年の見直しの結果を中期経営計画E-Plan2028に反映したとありますが、使ったシナリオ(気温が上がる道筋の想定)も、分析で何が分かったかも書いていません。
SSBJが求めること と この会社
| 項目(SSBJが求めること) | この会社 | 評価 |
時間軸 短期・中期・長期が何年かを決めて書く | 書いていない | × |
財務への影響 気候が売上・費用・資産に与える影響を、できれば金額で書く | 書いていない。リスクと機会の一覧も有報にない | × |
シナリオ分析 気温が上がる道筋をいくつか置いて、会社が耐えられるかを見る | 2025年に見直し、E-Plan2028に反映したとだけ書く | △ |
Scope1・2 自社が出した温室効果ガスの量を書く | 2030年に2018年度比55%減の目標だけ。実績の量はない | × |
Scope3 取引先や製品の使用まで含めた量を書く(初年度は省略できる) | カテゴリ11を2021年度比25%減の目標だけ。実績の量はない | × |
移行計画 排出を減らしていく道筋を書く(ある場合) | 省エネ、太陽光、CO2フリー電力、製品の高効率化を並べる。2025年5月にSBT短期目標の認定 | △ |
産業別の指標 業種ごとに決まった指標を書く(SASBがもと) | 書いていない | × |
第三者保証 外部の機関が数字を確かめたか | 2024年のScope1・2・3に保証。当期分と、その数字は有報にない | △ |
経過措置 初年度に使える省略(比較情報、Scope3など)を使ったと書いているか | 書いていない | × |
110社の中での位置
SSBJ基準を「参考にした」と書いた会社は110社中26社で、このうち時間軸を書いたのは12社です。荏原は書いていない14社の側にいますが、第三者保証に触れた31社と、役員報酬との連動を書いた28社には、どちらも入っています。SSBJに触れた110社の一覧
原文
- 戦略(気候変動):「開示の質的向上を図るため、2024年はIFRS® S2号(気候関連開示)を参照しており、2025年はSSBJによる気候関連開示基準を参照しています。」
- 戦略(気候変動):「シナリオ分析については中期経営計画の策定サイクルに合わせて見直しを行うこととしており、2025年の見直し結果を中期経営計画E-Plan2028に反映させています。」
- 戦略(気候変動):「2024年のScope1,2,3排出量について第三者保証を受けています。」
- ガバナンス(報酬制度):「評価ウェイトは短期業績連動報酬の10%としています。」
- 指標及び目標(気候変動):「詳細はウェブサイトに掲載しています。」