更新日 2026年11月3日
日本航空は、2050年の実質ゼロに向けて、SAF(持続可能な航空燃料)や省燃費機材の比率を年ごとの数字で示しました。一方で、SSBJ基準(日本のサステナビリティ開示の基準)は「参考にした」段階で、Scope別の排出量の表も第三者保証もサステナビリティの欄にありません。
良い点は、移行計画の中身、影響の大きさの線引き、社内炭素価格と報酬の3つです。
移行計画を数字でたどれる。2030年度に全搭載燃料の10%をSAFに置き換え、省燃費機材の比率をFY2025の45%から2030年に67%、2035年に「84%~」へ上げる道筋を示しています。2030年度の総排出量は2019年度比10%削減が目標で、何をどれだけ進めれば届くかが読めます。
影響の大きさを金額で線引きした。影響を年間の収入または費用の額で分け、30億円未満を小、300億円以上を大としています。時期も短期(2025年度)から長期(2031〜2050年度)まで区切っており、金額そのものはなくても「大」がどのくらいかは分かります。
社内炭素価格と報酬を使う。脱炭素への投資を進めるため、インターナルカーボンプライシング(社内で決めたCO2の値段)を使い、CO2排出削減目標を役員報酬の指標に入れています。みずほとMUFGは、社内炭素価格を意思決定に使っていないと書いています。
足りないのは、排出量の表、シナリオ分析の新しさ、保証と経過措置の記載の3つです。
排出量の表が欄にない。サステナビリティの欄には、Scope1・2・3の当期の排出量の表も、測り方の説明も載っていません。当期の実績は欄の外の46ページに「913万トン※速報値」とあるだけで、キリン、みずほ、MUFGは欄の中にScope1・2の表を載せています。
シナリオ分析が古い。シナリオ分析は2018年に環境省の支援事業で行ったもので、見ているのは2030年の社会です。みずほとMUFGは2026年3月期に分析をし直し、2050年や2100年まで見ています。
保証と経過措置に触れていない。第三者保証を受けたかどうかも、SSBJ基準の経過措置を使ったかどうかも、欄に書いていません。準拠については「当期においてはSSBJ基準のすべての定めには準拠しておりません」とあるだけで、いつ準拠するかは書いていません。
| 項目(SSBJが求めること) | この会社 | 評価 |
|---|---|---|
| 時間軸 短期・中期・長期が何年かを決めて書く | 短期は2025年度、中期は2026〜2030年度、長期は2031〜2050年度 | ○ |
| 財務への影響 気候が売上・費用・資産に与える影響を、できれば金額で書く | 大(300億円以上)・中・小の区分だけ。金額はない | △ |
| シナリオ分析 気温が上がる道筋をいくつか置いて、会社が耐えられるかを見る | 2018年に、2℃未満と4℃未満の2つで2030年の社会を分析 | △ |
| Scope1・2 自社が出した温室効果ガスの量を書く | 欄に表はない。46ページに2025年度「913万トン※速報値」 | △ |
| Scope3 取引先や製品の使用まで含めた量を書く(初年度は省略できる) | 欄に記載はない | × |
| 移行計画 排出を減らしていく道筋を書く(ある場合) | 1.5℃シナリオが前提。SAF10%、省燃費機材の比率など年ごとの道筋 | ○ |
| 産業別の指標 業種ごとに決まった指標を書く(SASBがもと) | 触れていない | × |
| 第三者保証 外部の機関が数字を確かめたか | 記載はない | × |
| 経過措置 初年度に使える省略(比較情報、Scope3など)を使ったと書いているか | 使ったとの記載はない | × |
日本航空は、SSBJに触れた110社の一覧で「一部を適用」に入る3社の1社です。社内炭素価格を書いたのは14社、移行計画を書いたのは22社で、その両方を書いたのは日本航空を含む4社です。