ここが良い
- 準拠していないと書いたうえで、準拠の時期を示しました。「当期においては…すべての定めには準拠しておりません」に続けて、2028年3月期以降にすべての定めに準拠できるよう措置を講じていると書いています。同じく「すべての定めには準拠しておりません」と書いた日本航空は、準拠の時期を書いていません。冒頭には報告期間と、取締役会の委託を受けた社長の承認日(2026年6月18日付)も置いています。
- Scope3の15区分すべてに、入れたか外したかと理由を書きました。Scope3(取引先や製品の使用まで含めた排出)の合計は1,042千t-CO2eで、7区分は数字を、8区分は対象外とした理由を書いています。たとえば売った製品の使用(カテゴリー11)は、自社の製品が中間製品で影響が小さいとして外しました。Scope2(電気などの使用による排出)もマーケット基準とロケーション基準の両方を出しており、何が入って何が抜けているかが有報の中で分かります。
- 時間軸を年数で決め、リスクごとに時期を付けました。短期を1年、中期を2~5年、長期を6年以上とし、「大規模自然災害(異常気象)[中~長期]」のように、リスクと機会の5項目すべてに時期を書いています。設備投資の判断に使う社内の炭素価格も、1トンあたり10,000円と数字で出しています。
ここが物足りない
- シナリオ分析の結果が、有報に載っていません。シナリオ分析(気温が上がる道筋をいくつか置いて影響を見ること)は実施したと書いていますが、最新の結果は2026年9月末にウェブサイトと統合報告書で開示する予定としています。有報の承認日は2026年6月18日なので、読み手は結果を約3か月待つことになります。
- 気候が財務に与える影響を、金額でも大きさの区分でも示していません。リスクと機会の5項目には時期が付いているだけで、売上や費用にどのくらい響くかは書いていません。SSBJ基準は財務への影響を、できれば金額で書くよう求めています。
SSBJが求めること と この会社
| 項目(SSBJが求めること) | この会社 | 評価 |
時間軸 短期・中期・長期が何年かを決めて書く | 短期1年、中期2~5年、長期6年以上。リスクごとに時期を付ける | ○ |
財務への影響 気候が売上・費用・資産に与える影響を、できれば金額で書く | 「経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性」と言葉だけ | × |
シナリオ分析 気温が上がる道筋をいくつか置いて、会社が耐えられるかを見る | 実施したと書く。結果は2026年9月末にウェブサイトと統合報告書で | △ |
Scope1・2 自社が出した温室効果ガスの量を書く | 2025年度はScope1が149千t、Scope2がマーケット基準144千t・ロケーション基準331千t(単位はCO2換算) | ○ |
Scope3 取引先や製品の使用まで含めた量を書く(初年度は省略できる) | 2025年度は1,042千t-CO2e。15区分すべての扱いと、対象外の理由 | ○ |
移行計画 排出を減らしていく道筋を書く(ある場合) | 2030年度に2017年度比で総量30%減、2040年代のできるだけ早い段階で実質ゼロ。「減らす・変える・回収する」の3段階 | △ |
産業別の指標 業種ごとに決まった指標を書く(SASBがもと) | SASBスタンダードを参考にしたと書く。業種の指標と示した数字はない | △ |
第三者保証 外部の機関が数字を確かめたか | 温室効果ガスの排出量の実績を外部機関が検証 | ○ |
経過措置 初年度に使える省略(比較情報、Scope3など)を使ったと書いているか | 書いていない | × |
110社の中での位置
110社のうち、SSBJ基準への準拠を表明したのはみずほとキリンの2社で、その次の「一部を適用」に入るのは三菱UFJ、日本航空、イビデンの3社です。イビデンは段階では上から2つ目にいますが、気候の財務影響を金額で書いた16社には入っていません。SSBJに触れた110社の一覧
原文
- 作成方法:「当期においてはサステナビリティ開示基準(サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が公表する基準をいう。以下同じ。)のすべての定めには準拠しておりませんが、2028年3月期以降において、すべての定めに準拠できるよう必要な措置を講じております。」
- 作成方法:「本サステナビリティ関連財務開示は、第994回取締役会(2025年5月20日)の決議に基づき、取締役会の委託を受けた代表取締役社長の承認(2026年6月18日付)を受けております。」
- 戦略:「短期を1年、中期を2年から5年、長期を6年以上と定義しております。」
- 戦略(気候変動):「最新のシナリオ分析の結果は、当社ウェブサイト「地球環境との共存」及び統合報告書2026で2026年9月末に開示の予定です。」
- 指標及び目標(Scope3の注):「当社製品は中間製品であり、関連する排出に与える影響が小さいため、対象外としています。」