更新日 2026年11月1日
国内の削減量や吸収量を国が認証したJ-クレジットなどのカーボンクレジットを買えば、企業は国に報告する温室効果ガスの排出量から差し引けます。自社で減らしきれない排出を、ほかの場所での削減や吸収で埋め合わせる仕組みで、いちばん効くのは、排出の多い事業者が入る国の排出量取引制度、GX-ETSの対象事業者です。一方、上場会社の有価証券報告書、略して有報の開示や、企業の削減目標を認める国際団体SBTiの目標では差し引けません。
| クレジットとの関わり | 当たる目安 | やること |
|---|---|---|
| 国の制度でクレジットを使える会社 | CO2の直接排出が年10万トン以上ならGX-ETS、排出量が年3,000トンを超えるなら温対法の報告の対象。自社の温対法の報告書の排出量で確かめる | 使えるクレジットの種類と上限を確かめ、期限までに無効化(使用済みにする手続き)する |
| 有報で開示する会社、SBTiの目標を持つ会社 | 有報をSSBJ基準で書いている。またはSBTiのTarget dashboardに社名が載っている | 開示と目標の数字を、国への報告の数字と分けて持つ |
| クレジットを創出できる会社 | 国内で省エネ・再エネの設備を入れた、森林を管理している。または海外のパートナー国で事業をしている | J-クレジットか、日本と相手国で分ける海外のJCMクレジットを創出して売れる |
日本企業がクレジットを使うのは、GX-ETSと温対法での国への報告と、自らの判断で排出を相殺する場合です。温対法は事業者に「排出量を国に報告する義務」を課す法律で、燃料・電気が原油換算で年1,500キロリットル以上なら対象です。1行目と2行目の両方に当たる会社は、無効化の期限がある国の制度から手をつけます。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 2026年4月1日(済) | GX-ETSの義務の制度が始まる。2026年度の排出からクレジットで控除できる |
| 2027年6月30日 | GX-ETSの対象事業者が、2026年度の排出に反映するクレジットを無効化する期限 |
| 2027年9月30日 | 対象事業者がGX-ETSの2026年度の実績を報告 |
| 2028年1月31日 | 対象事業者がGX-ETSの2026年度分の排出枠を持つ期限 |
Q GX-ETSでは、民間のボランタリー市場のクレジットも使えますか。
A 経済産業省の説明資料には挙がっていません。挙がっているのは、J-クレジットとJCMクレジットです。
Q GX-ETSの上限は、何に対する割合ですか。
A 燃料と原材料に由来するCO2排出に対する割合です。説明資料は上限を実排出量に対する割合で示しており、この排出が実排出量にあたります。
Q 温対法の報告では、クレジットをいくらでも使えますか。
A 上限はありません。省エネ法や温対法の報告では、クレジットの使用に上限はなく、無効化した量を控除するなどの調整ができます。
クレジットの計算 クレジットは、対策をしなかった場合の排出量、つまりベースラインと、対策後の排出量の差から計算します。
| 項目 | J-クレジット | JCM |
|---|---|---|
| 何が | 国が認証する | 両国で配分する |
| 運営 | 経済産業省・環境省・農林水産省 | 日本と相手国の合同委員会。日本側の事務はJCM実施機構 |
| 誰が使う | GX-ETSの対象事業者、温対法の報告をする事業者、自らの判断で相殺する企業 | 同左。日本政府は国の削減目標の達成にも使う。2030年度・2040年度の累積の確保の目標は、2025年2月18日の閣議決定による |
GX-ETSは、GX推進法にもとづく排出量取引制度で、CO2の直接排出が年10万トン以上の事業者が対象です。国の制度のほかに、民間の制度のクレジットもあります。
| 条件 | 対象か |
|---|---|
| CO2の直接排出が年10万トン以上の事業者 | GX-ETSの対象。J-クレジットとJCMで、実排出量の10%まで控除できる |
| 排出量が年3,000トンを超える事業者 | 温対法のSHK制度で報告の義務。無効化した量を控除するなどの調整ができる |
| SSBJ基準で開示する会社 | 排出量はクレジットを差し引く前の量で開示する。純量目標では使う予定のクレジットを説明する |
| SBTiの第2版で目標を立てる企業 | クレジットは目標の達成に数えない |
| 国内で省エネ・再エネ・森林管理などをする企業や自治体 | J-クレジットをつくれる |
| パートナー国で事業をする日本企業など | JCMのクレジットをつくれる |
2013年からの日程
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2013年1月8日 | 日本とモンゴルがJCMに最初の署名 |
| 2013年4月1日 | 国がJ-クレジット制度を始める |
| 2023年10月11日 | 東京証券取引所がカーボン・クレジット市場を開く |
| 2025年4月1日 | 温対法の報告で、JCMに改正後の告示を適用(2025年度以降の報告) |
| 2027年1月1日 | この日以後に始まる年度から、会社がSSBJ基準の2026年改正版を適用する |
| 2027年2月1日 | 企業がSBTiの第2版で目標を出せるようになる |
| 2028年1月31日 | SBTi第1.3.1版の受付終了 |
| 2030年度・2040年度 | 政府がJCMで累積1億トン・2億トン程度の削減・吸収を確保する目標 |
| 2031年3月31日 | 告示に書かれたJ-クレジット制度の期間の終わり |
クレジットになる活動の基準 どの制度も、削減が対策のおかげで生まれたことを確かめます。この考え方を追加性と呼びます。追加性があるとは、クレジットの収入がなければ行われなかった対策であることです。
| 基準 | J-クレジット | JCM |
|---|---|---|
| 場所 | 日本国内で実施する | 32か国のパートナー国で実施する |
| 計算の決まり | 制度で承認された方法論が適用できる | 合同委員会が承認した方法論にもとづく |
| 設備の時期 | 登録申請日の2年前以降に稼働した設備 | 機器の調達か建設を始める前に、事業概要PINを相手国政府に出す |
| 追加性 | 追加性があること | クレジットによる動機づけが必要なこと。一律の数値基準は置かない |
| 重複の禁止 | グリーン電力証書など類似の制度で、同じ活動を登録していない | 日本に移転した量は、相手国の削減量に数えない |
| 審査 | 審査機関の第三者審査を受ける | 第三者機関TPEの妥当性確認と検証を受ける |
PINはProject Idea Noteの略で、相手国に事業の概要を示す書類です。JCMの適用基準は、2025年12月8日に関係省庁と実施機構が示しました。この基準を満たしても、相手国政府の同意がなければJCMにはなりません。
J-クレジットの方法論と認証 方法論は、技術ごとに適用範囲、削減量の計算方法、モニタリングの方法を定めたものです。2026年1月時点で、74の方法論が承認されています。当てはまる方法論がなければ、方法論策定規程に従って新しく提案できます。
| 分野 | 方法論の例 |
|---|---|
| 省エネ設備の導入 | ボイラー、照明、空調、コージェネレーション |
| 再エネの導入 | バイオマス燃料で化石燃料を置き換える、太陽光発電 |
| 森林の管理 | 森林経営計画にもとづく間伐や植林 |
プロジェクトを登録する人には、次の要件があります。
登録の形には、通常型とプログラム型があります。プログラム型は、同じ種類の小さな活動を束ねて1つのプロジェクトにする形です。家庭の太陽光発電のように、単独では登録が難しい活動も扱えます。活動を後から加えるときに、計画の変更や審査は要りません。
国と事務局は、計画書や報告書の作成の支援と、審査費用の支援を用意しています。支援には利用の条件があります。
J-クレジットの登録から認証までは、次の流れです。
J-クレジットは、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場で売買できます。
| 区分 | 加重平均の価格(円/t-CO2) | 約定数量(t-CO2) |
|---|---|---|
| 省エネ | 2,899 | 351,884 |
| 再エネ・電力と熱 | 4,577 | 701,186 |
| 森林 | 5,573 | 20,714 |
| 全体 | 4,046 | 1,075,040 |
表は、市場の開設から2026年1月30日までの約定の結果です。総額は約43.5億円でした。参加者は2026年1月23日時点で347者です。売買は、使い道に応じた9つの区分に分かれています。
JCMの仕組み JCMのクレジットは、リファレンス排出量とプロジェクト排出量の差から発行されます。リファレンス排出量は、成り行きの排出、BaUを十分に下回るよう、控えめに置く値です。BaUはBusiness as Usualの略です。
削減量の配分は、両国で構成する合同委員会が決めます。配分では資金に加え、技術の提供や運営面の貢献も考えます。クレジットにならない削減量も、両国の削減目標の達成に役立ちます。
| パリ協定第6条との関係 | 内容 |
|---|---|
| 移転の承認 | 日本への移転量、使い道、対象期間を両国政府が承認する。移転された量はITMOsになる |
| 国連への報告 | 初期報告、年次情報、定期情報で報告し、審査を受ける |
| 相当調整 | 日本に移転した量を日本の排出量から引き、同じ量を相手国の排出量に足す。2021年以降の削減分が対象 |
パリ協定第6条は、国どうしが協力して削減の成果をやりとりする決まりです。ITMOsは「国際的に移転される緩和成果」の略称です。相当調整は、同じ削減を両国で二重に数えないための調整です。
温対法の改正(令和6年法律第56号)で、JCMは法律に位置づけられました。法律上は「国際協力排出削減量」と呼びます。日本政府指定JCM実施機構、略してJCMAが、登録からクレジット発行までの事務を担います。運営は公益財団法人地球環境センターです。
JCMは、PINの提出、方法論の承認、設計書PDDの作成、妥当性確認、登録、モニタリング、検証、発行の順に進みます。PDDはProject Design Documentの略で、モニタリング方法や推定削減量を書いた設計書です。発行量は合同委員会が決め、日本と相手国の政府がそれぞれクレジットを発行します。クレジットは、日本が取得する分とパートナー国の分に分かれます。妥当性確認と検証は、同じ第三者機関が行えます。
GX-ETSでクレジットを使うときの決まり
| 項目 | 決まり |
|---|---|
| 反映の期限 | 報告する年度の6月末までに無効化した分 |
| 重なる期間 | 4月1日〜6月30日の無効化分は、前年度か当年度のどちらか一方にだけ反映 |
| 報告に書くこと | 無効化量か移転量、その日付、クレジットの番号、無効化を確かめられる資料 |
| 対象かどうかの判定 | 判定に使う排出量には、クレジットによる相殺を反映しない |
経済産業省の説明資料では、排出実績量は次の式で示されています。燃料と原材料に由来するCO2排出から、クレジットの無効化量を引きます。そこに、クレジットの移転量を足します。2026年度の排出は2027年度に報告するため、2027年6月末までの無効化分を反映します。2027年6月30日という期限は、この決まりから求めた日付です。
施行規則第16条は、国内・海外の認証排出削減量を加減したときに、その資料を出すよう定めています。説明資料の文言は「実排出量の10%を上限とする」です。
温対法での扱いと経過措置
| 制度 | クレジットに関する定め | 時期 |
|---|---|---|
| J-クレジット | 温対法の報告で使える国内認証排出削減量の1つ | 2013年4月1日〜2031年3月31日の制度として告示に記載 |
| JCM | 温対法の報告で使える海外認証排出削減量。改正後の告示を適用 | 2025年4月1日から適用(2025年度以降の報告) |
| JCMの経過措置 | 2020年12月31日以前の事業による量も、条件つきで海外認証排出削減量とみなす | 同上の告示の附則 |
SSBJ基準 SSBJ基準は、ISSBの基準にそろえて作られています。2026年改正版は、2025年12月11日以後に終わる年度から前倒しで使えます。
気候関連開示基準は、クレジットを「温室効果ガスの削減か除去を表す単位」と定義しています。クレジットは電子登録で一意の番号を付けて管理し、無効化されます。
排出量はスコープ1・2・3に分けて開示します。純量目標では、次のことを説明します。
SBTi 企業ネットゼロ基準の第2版(2026年6月)では、クレジットは自社の削減の代わりになりません。他者に売ったクレジットや、事前に見積もっただけの削減は、目標の達成に使えません。目標に届かない場合は炭素除去を任意で買うよう勧めていますが、この除去も目標の進み具合には数えません。
第2版は、継続的排出に対する責任と訳されるOERを、任意の認定制度として設けました。まだ出している排出の一部に、外部の削減や除去への貢献で責任を持つ企業を認定します。認定は3段階です。
| 段階 | 求められる範囲 |
|---|---|
| Engaged | スコープ1・2・3の継続的な排出の1%以上 |
| Advanced | スコープ1・2の100%を含め、全体の10%以上。予算で行う場合は1トンあたり20米ドル |
| Leadership | 全体の100%。1トンあたり80米ドルの予算を設ける |
OERで使うクレジットは、主張する時点で無効化し、その後も使えないようにします。OERに使った量は、スコープ1・2・3の目標の達成に数えられません。ネットゼロの時点では、残った排出を炭素除去で100%中和することが求められます。
ICVCM 自主的炭素市場のための十全性評議会、ICVCMは独立した非営利の団体で、高品質なクレジットの基準としてコア・カーボン原則、CCPの10項目を定めています。
| 区分 | 原則 |
|---|---|
| ガバナンス | 効果のあるガバナンス、追跡、透明性、独立した第三者による妥当性確認と検証 |
| 排出への効果 | 追加性、永続性、削減・除去量の確かな定量化、二重計上の防止 |
| 持続可能な影響 | 持続可能な開発の便益と安全策、ネットゼロへの移行への貢献 |
ICVCMは、クレジットを発行する制度と、クレジットの種類である方法論を分けて審査します。基準を満たす制度は「CCP適格」と認められます。適格な制度は、承認された種類のクレジットにCCPのラベルを付けられます。
ICVCMの審査状況のページ(2026年10月27日更新)では、CCP適格の制度が13、承認された方法論が45件です。系統につなぐ再エネの方法論などは、基準を満たさないと判断されました。
SBTiの枠組みの認定と、JCMの手順
| 時期 | 予定 | 状況 |
|---|---|---|
| 未定 | SBTiが第三者の枠組みを認める基準と手続き。どの枠組みが認められるか | 今後つくる予定 |
| 未定 | JCMのPINの提出と異議の確認の手順 | パートナー国ごとに調整が続いている |
| 時期 | 予定 | 状況 |
|---|---|---|
| 2026年11月9〜20日 | トルコ・アンタルヤでの国連の気候変動会議COP31 | 会期は決まっている。会議の結果はまだ出ていない |
| 2031年3月31日より後 | J-クレジット制度の扱い | 未定 |
| 2035年 | SBTiがOERを義務にする意向 | 意向の段階。詳しい要件は未定 |