更新日 2026年11月1日
CBAMは、鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、水素、電力の輸入品に、製造時の温室効果ガスの分の費用をかけるEUの制度で、2026年の輸入分から本格適用が始まりました。費用を払うのはEUの輸入者ですが、額のもとになる製品1トンあたりの排出量は、輸入者が日本の作り手に尋ねてきます。機械や部品の多くは、今は対象外です。
| 会社 | 当たる条件 | 求められること |
|---|---|---|
| EUの子会社が輸入する会社 | EUの子会社が対象品を輸入し、その量が暦年の合計で50トンを超える。水素と電力は量にかかわらず。子会社の輸入の記録で確かめる | EUの子会社が国の認定を受けて申告し、費用を払う |
| 対象品をつくる日本の工場 | 日本の製造者で、自社の品が対象品。EUへ輸出するか、顧客がそれを材料に対象品をつくってEUへ出すか、商社がEUへ売る。自社の品が対象品でないなら、顧客の製品が対象品でも、この行には当たらない。品目は、輸出の通関書類に載っている世界共通の品目番号、HSコードで分かる | 製品の排出量を測り、輸入者に渡す。EUの外の工場に、CBAMで動く義務はない。数字を出さなければ、輸入者はEUが決めた既定値に上乗せを足して使う |
| 対象品をつくらず、輸入も少ない会社 | 対象品をつくっておらず、EUへ渡る流れもない。EUの子会社の輸入が上の量以下なら、義務は免除 | いまは申告もデータの用意も要らない。鉄鋼やアルミを多く含む川下製品に広げる案に、自社の品が入るかを確かめておく |
対象品を決めるのはEUの品目番号のCNコードで、上6桁はHSコードと同じです。鉄鋼は板・棒・線などの素材の多くと、管、構造物、缶やタンクなどの容器、ねじ・ボルト、金具などのそのほかの鉄鋼製品です。アルミニウムは地金、板・はく、管、缶などの容器の多くで、セメントには原料のクリンカー、肥料にはアンモニアと硝酸も入ります。缶詰や缶飲料のように中身を詰めて出す品は、ふつう中身の食品・飲料の品目番号で通関するので、容器としては数えません。機械や部品の多くは今は対象外です。EUの子会社が輸入もしていて、自社の品も対象品なら、製品の排出量の用意から始めます。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2025年12月31日(済) | 移行期間。輸入者が報告だけをした |
| 2026年12月31日まで | 実測値を出したい工場が、何をどう測るかを決めた監視計画をまとめ、燃料・原料・電力の量を記録し始める。実測値はつくった年のデータで出すため |
| 2027年2月1日〜9月30日 | 輸入者がCBAM証書を買い始め、9月30日までに2026年分を申告して納める |
| 2034年 | EUの工場に無料で配る排出枠、無償割当がなくなり、輸入品も埋め込み排出量の全量が証書の対象になる |
日本の工場が輸入者から聞かれたとき 輸入者の文面をどう読むかは「取引先からのCO2の問い合わせ」が詳しいです。
EUの子会社が輸入しているとき
Q 検証の会社から、有料の検証を売り込まれました。受けるべきですか。
A 詐欺の可能性が高い申し出です。実測値は製造者から受け取るもので、欧州委員会はほかの人からの申し出をそう見ています。
Q 仕入れた鋼材の実測値が手に入らないときは、どうしますか。
A 仕入れた鋼材の分だけ既定値を使い、自社の工程は実測値にできます。原料のうち対象品のものは前駆物質と呼び、分けて数えるためです。
Q 2025年につくり、2026年に輸入した品はどう数えますか。
A 既定値で数えます。2026年の輸入分は報告期間が2026年と決められていて、それより前の実測値はないためです。
根拠と仕組み 義務を負うのはEUの輸入者で、輸入した対象品の埋め込み排出量に見合う枚数のCBAM証書を、毎年納めます。証書の価格は、EU ETSの排出枠の価格に連動します。申告と証書の納付をするのは、国の認定を受けた認定申告者です。2023年10月〜2025年12月の移行期間は、輸入者が四半期ごとに報告し、支払いはありませんでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 規則(EU)2023/956。2025年10月8日の規則(EU)2025/2083で簡素化 |
| 本格適用の中身 | 年1回の申告と証書の納付 |
| 間接通関代理人 | 輸入者の名で通関せず自分の名で手続きする代理人。輸入者に含まれ、義務がかかる |
| 対象外の原産国 | アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスの原産品 |
欧州委員会は2025年12月に、計算方法や既定値を定める実施規則をまとめて採択しました。
本格適用の日程の細部
| 時期 | 中身 |
|---|---|
| 2027年1月4日 | 2026年10〜12月分の証書の価格が公表される予定 |
| 2027年2月1日 | 認定申告者が証書を買い始める。2026年分もここから買う |
| 2027年 | 認定申告者が、四半期ごとに証書を一定の枚数持っておく。必要な枚数は、その年の初めから輸入した分の埋め込み排出量の50%以上 |
| 2027年 | 申告を出すCBAM登録簿の画面が開く予定 |
| 2028年 | 製造者どうしで、前駆物質のデータをCBAM登録簿で共有できるようになる |
製造者が準備するデータ
| 準備するもの | 中身 |
|---|---|
| 直接排出 | 燃料や原料の量と排出係数から計算するか、煙突で濃度と流量を測る |
| 熱の流れ | 蒸気などの熱を、どの生産工程で使ったか |
| 電力 | セメント・肥料などでは、生産工程ごとの電力量と、電力の排出係数 |
| 前駆物質 | 仕入れ先の工場、報告期間、1トンあたりの直接・間接の排出量、生産ルート、検証報告 |
| 無償割当の調整 | EUにあればもらえる無償割当を計算するためのデータ |
| 自国の炭素価格 | 支払った炭素価格と、それを生産工程に割り振る情報 |
| 品目ごとの項目 | セメントのクリンカーの含有量、混合肥料の窒素の形態など |
| 記録の保管 | 監視の記録と根拠の書類を、報告期間の後6年以上 |
データの渡し方のうち、欧州委員会が勧めているのはCBAM登録簿への登録です。登録した場合、輸入者が見るのは排出報告の要約だけです。登録しない場合は、排出報告の全体と検証報告を輸入者に渡すことになります。2027年は、製造者の登録は義務ではありません。
電力の排出係数は、系統の電力なら既定値の規則の附属書IIの値を使います。自家発電や、特定の発電所との電力購入契約の場合は、別の規則があります。欧州委員会は、実測値を使いたい輸入者に、まず製造者へ連絡するよう求めています。
年50トンの基準
| 判定の項目 | 基準 |
|---|---|
| 数える単位 | 同じ輸入者が1暦年に輸入した対象品の正味質量の合計。CNコードをまたいで合算 |
| 年の途中で超えた場合 | その年の全量が対象。超える前に輸入した分も含む |
| 基準の見直し | 免除される排出が全体の1%以下になるよう、欧州委員会が毎年確かめる |
欧州委員会の改正案の説明によると、50トンの基準で対象から外れる輸入者は約18万2,000です。
輸入者の手続き
| 手順 | 中身 |
|---|---|
| 認定申告者になる | 設立した加盟国でCBAMを担当する当局に、CBAM登録簿から申請する。認定申告者でない人の輸入を、税関は認めない |
| 認定の要件 | 税関、税、市場の不正、CBAMの決まりへの重大な違反や繰り返しの違反がないこと。財務と運営の能力と、その国での設立も求められる。EUの税関で使う事業者番号、EORI番号も必要 |
| 年次の申告 | 前年の輸入分を、毎年9月30日までにCBAM登録簿で申告する。数量、埋め込み排出量、無償割当の調整、外国で払った炭素価格を書く |
| 証書を買う | 共通中央プラットフォームで買う |
| 証書を納める | 申告と同じ9月30日までに、申告した枚数を納める。残った証書は、加盟国に買い戻してもらえる場合がある |
| 責任を負う | 申告の中身の責任は、認定申告者が負う。検証報告の誤りで枚数が変わると、罰則を受けることがある |
証書は、ほかの人に譲ったり売ったりできません。同じグループの会社でも同じで、買った認定申告者だけが使えます。
納める枚数と証書の価格 納める枚数は、埋め込み排出量から、無償割当の調整と、原産国で実際に払った炭素価格の分を引いて決まります。結果がマイナスなら、その品目は0枚です。マイナス分を、ほかの品目と相殺することはできません。下の表の価格はCO2 1トンあたりの額で、この式で求めた排出量の分だけ証書が要ります。
| 2026年の輸入分 | CO2 1トンあたりの証書の価格 | 公表日 |
|---|---|---|
| 1〜3月 | 75.36ユーロ | 2026年4月7日 |
| 4〜6月 | 75.28ユーロ | 2026年7月6日 |
| 7〜9月 | 82.32ユーロ | 2026年10月5日 |
| 10〜12月 | 未公表 | 2027年1月4日の予定 |
2026年分は、輸入した四半期の価格で数えます。価格は、EU ETSの排出枠のオークション価格の平均です。2027年からは、週ごとの平均に変わります。
EU ETSの無償割当が減る分に合わせて、2026〜2033年にCBAMの負担が増えます。無償割当の調整には、年ごとのCBAM係数を使います。欧州委員会のガイダンスの計算例では、2026年は97.5%、2027年は95.0%です。
埋め込み排出量の数え方 算定の方法は、実施規則(EU)2025/2547が定めています。計算は、8桁のCNコードごとに行います。
| 区分 | 中身 |
|---|---|
| 直接排出 | 製造工程で出る排出。工場で使う熱や冷熱をつくるときの排出も入る。熱を工場の外でつくった場合も直接排出に数える |
| 間接排出 | 製造で使った電力の発電に伴う排出。電力量に電力の排出係数を掛けて求める |
間接排出を数えるのは、セメントと肥料と焼結鉱だけです。鉄鋼、アルミニウム、水素は、直接排出だけを数えます。
前駆物質を使う製品は「複合品」と呼ばれ、前駆物質の埋め込み排出量を足します。前駆物質の例は、セメントの原料のクリンカーです。前駆物質を少量しか使わない場合でも、省く基準はありません。EUでつくられた前駆物質は0と数えますが、使った量は報告します。
鉄鋼製品では、圧延、めっき、線引きなどの加工を計算に入れます。切断、溶接、仕上げは入れません。前駆物質の質量は、切断する前の量で数えます。
金属の部品とほかの素材を組み立てた製品も、CNコードが附属書Iにあれば対象です。50トンの判定には、通関申告の正味質量を使います。埋め込み排出量は、金属の部分の分だけで計算します。
報告期間は、製品をつくった暦年です。実際の製造時期の証拠がなければ、輸入した年をつくった年とみなします。ライフサイクル評価のデータベースにある排出係数は使えません。
2025年につくり、2026年に輸入した品も対象で、既定値で数えます。2026年の輸入分は報告期間が2026年と決められていて、2026年より前の実測値はないためです。
既定値と上乗せ 既定値は、実施規則(EU)2025/2621の附属書Iにあり、国ごと・年ごとに決まっています。2026年7月の訂正規則(EU)2026/1740で直されました。電力には、この既定値は使いません。表に国や品目がない場合は、「その他の国と地域」の値を使います。この値は、排出原単位が高い上位10の輸出国の平均です。
| 輸入の年 | 肥料以外の上乗せ | 肥料の上乗せ |
|---|---|---|
| 2026年 | 10% | 1% |
| 2027年 | 20% | 1% |
| 2028年以降 | 30% | 1% |
欧州委員会は、上乗せは排出量を少なく見積もらないためだと説明し、多くの場合は実測値が輸入者に有利だと見ています。前駆物質の生産国が分からない場合は、同じ規則の附属書IVの値を使います。
実測値を使うための検証 2026年1月1日以降の輸入品で実測値を使うには、検証が必要です。検証機関を認定するのは、EU加盟国の国家認定機関です。EUの外の検証会社も申請できます。
| 項目 | 決まり |
|---|---|
| 検証機関の要件 | ISO 14065とISO 17029に沿う。認定の有効期間は5年 |
| 工場の訪問 | 初めての検証では、原則として工場を実際に訪問する。2年目からは、条件を満たせば、オンラインでの訪問や訪問の省略ができる |
| 言語 | 検証報告は英語で出す。責任者の検証員は、英語で意思疎通できる必要がある |
| 時期 | 最初の認定は2026年9月ごろ、最初の検証報告は2027年の初めに出る見込み |
対象品目のCNコード 鉄鋼には焼結鉱、セメントにはクリンカー、肥料にはHSコードの上2桁で肥料の区分にあたる31類のほか、アンモニアと硝酸も入ります。規則の附属書Iに4〜6桁で書かれている場合、その数字で始まる8桁のコードがすべて入ります。鉄鋼は72類の多くと、ねじ・ボルトなど73類の一部、アルミニウムは76類の多くです。84類などの機械や部品は今は対象外です。
| 分野 | 主なCNコード | 数える排出 |
|---|---|---|
| セメント | クリンカーの2523 10 00、2523 21 00、2523 29 00、2523 30 00、2523 90 00、焼成したカオリン質粘土。粘土は2507 00 80のうちTARIC 2507 00 80 80 | 直接と間接 |
| 鉄鋼 | 焼結鉱などの2601 12 00、板・棒・線などの素材の7201〜7229の多く、管・構造物・缶やタンクなどの容器の7301〜7311、ねじ・ボルトなどの7318、7326 | 直接のみ。焼結鉱は間接も |
| アルミニウム | 地金の7601、板・はく・管などの7603〜7608、7609 00 00、7610、7611 00 00、缶などの容器の7612、7613 00 00、7614、7616 | 直接のみ |
| 肥料 | 硝酸の2808 00 00、アンモニアの2814、2834 21 00、3102、3105。3105 60 00は除く | 直接と間接 |
| 水素 | 2804 10 00 | 直接のみ |
| 電力 | 附属書Iに記載 | 電力用の別の計算 |
鉄鋼の7201〜7229には、対象外のコードもあります。
EU ETS・外国の炭素価格・フットプリントとの関係
| 制度 | CBAMとの関係 |
|---|---|
| EU ETS | CBAMは、EU ETSと対になる仕組み。EUの工場がもらう無償割当は、2026年から2034年にかけて減る。CBAMは、その分だけ少しずつ負担を増やす |
| 外国の炭素価格 | 原産国で実際に払った炭素価格は、差し引ける。払い戻しや無償割当があれば、その分は差し引けない |
| 製品のカーボンフットプリント | CBAMの算定は、EU ETSの決まりに沿っている。GHGプロトコルやISO 14067とは違うところがある |
| 除外される国 | EU ETSを使う国や、EU ETSとつながった制度を持つ国の原産品は、対象外 |
改正案の中身と手続き 無償割当の調整の基準値であるCBAMベンチマークを見直し、2027年1月1日に適用する方針が、実施規則の前文にあります。川下製品への拡大の案は、欧州委員会が2025年12月17日にCOM(2025)989として出しました。鉄鋼やアルミニウムを多く含む180品目を加える案です。
案には、迂回を防ぐ決まりも入っています。既定値を下げるためにサプライチェーンを意図して組み替えることを、迂回の例に加えます。輸入した電力の排出係数の計算も見直し、2026年1月1日以降の輸入に当てはめる案です。
EU理事会は、2026年6月12日に一般的アプローチと呼ぶ交渉の立場をまとめました。委員会案に品目を加え、一部を外しています。欧州議会は、2026年9月15日に第1読会の立場を採決し、理事会との交渉に入っています。品目の数や適用の日は、交渉の結果で決まります。
| 時期 | 予定 | 状態 |
|---|---|---|
| 2026年中 | 外国で払った炭素の費用を差し引く実施規則を採択 | 2026年10月15日時点の欧州委員会の予定 |
| 未定 | 差し引く分を数えるときに使う、国ごとの炭素価格の既定値を示す | 欧州委員会が検討中 |
| 2028年1月1日 | 川下製品への拡大を適用。品目の数も未定 | 改正案。2026年11月1日の時点で合意はなく、未成立 |