更新日 2026年11月1日
EUタクソノミーは、どの経済活動が環境の面で持続可能かを、EU共通の基準で分類する仕組みです。環境に良いとうたう金融商品や社債の物差しをそろえ、お金をそうした活動に向かわせるためのもので、開示の義務はCSRDの対象の会社、日本企業ならEUの大きな子会社にかかります。2026年1月からは、重要でない活動の評価を省けるようにするなど、開示を簡素にしたルールが適用されています。
| 会社 | EUとのつながり | 開示・回答すること |
|---|---|---|
| 開示する会社 | EUの子会社が単体か、EUの中間持株会社の連結で、純売上高4.5億ユーロ超かつ平均従業員1,000人超。CSRDの対象と同じで、EUの子会社ごとの決算で判定する。金融商品を出す金融機関も対象 | 売上、設備投資のCapEx、事業費のOpExのうち、タクソノミーに適合する活動、つまり基準をすべて満たす活動の割合を開示する |
| EUの銀行から借りている会社 | EUの銀行から、使い道が決まっていない貸出を受けている。財務の借入一覧で分かる | 求められたら、CSRDで報告しているかを銀行に伝える |
| EUに大きな子会社も借入もない会社 | EUに大きな子会社がなく、EUの銀行からの借り入れもない。CSRDの見直しで義務がなくなった会社も、タクソノミーの開示義務はかからない | 開示も問い合わせもない。EUの銀行から借りれば、2行目の立場になる |
| 時期 | すること |
|---|---|
| 2022〜2023年(済) | 気候変動の緩和、水、循環経済など6つの環境目的について、開示の規定の適用が始まった |
| 2026年1月1日(済) | 簡素にした改正後のルールの適用が始まった |
| 2025年度分、2026年に公表 | 対象の会社が、原則は改正後のルールで開示する。改正前のルールを選ぶこともできる |
| 2026年度以後 | 対象の会社が、改正後のルールで開示する |
| 2027年12月31日 | 金融機関が詳しい指標を出さなくてよい2年間の免除が終わる |
開示するEU子会社
EUの銀行の借り手
Q 太陽光の売上が4%、風力が5%です。合計9%なので、評価を省けますか。
A 2つを「再生可能エネルギー」という報告セグメントにまとめているなら、重要でないとは扱えません。報告セグメントは決算で開示する事業の区分で、手引きの案が、その区分を定めるIFRS第8号との整合を求めているためです。報告セグメントにしていなければ、合計が10%を超えないので評価を省けます。
根拠と仕組み 根拠はタクソノミー規則(規則(EU)2020/852)です。2020年6月22日にEU官報に載り、7月12日に発効しました。規則が大枠を定め、活動ごとの細かい基準は欧州委員会の委任規則が定めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何を | 環境の面で持続可能な経済活動を、EU共通の基準で分類する |
| 誰に | CSRDで報告する会社、つまり会計指令の第19a条・第29a条の会社と、金融商品を出す金融機関など |
| 開示の場所 | 年次報告書のマネジメントレポートの中のサステナビリティ報告 |
| 2026年の改正 | 委任規則(EU)2026/73。2026年1月1日から適用 |
規則第1条は適用の範囲を3つ挙げています。環境に良いとうたう金融商品や社債の基準を定めるEUや加盟国の措置、金融商品を出す金融機関、非財務情報を公表する会社です。
| 時期 | 中身 |
|---|---|
| 2022年1月1日(済) | 気候の2つの環境目的について、開示の規定の適用が始まった |
| 2023年1月1日(済) | ほかの4つの環境目的について、開示の規定の適用が始まった |
| 2028年1月1日 | 銀行が、手数料と売買目的の資産の指標の開示を始める |
委任規則に載っている活動を「適格」、規則が定める4つの条件をすべて満たす活動を「適合」と呼びます。適格は、条件を満たすかを問いません。
持続可能と認める4つの条件 規則第3条は、ある経済活動が持続可能と認められる条件を4つ定めています。
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| 実質的な貢献 | 6つの環境目的のうち1つ以上に、実質的に貢献する |
| 著しい害を与えない | ほかの環境目的に、著しい害を与えない。略してDNSH |
| 最低限の保護措置 | 人権などの国際指針に沿った手続きを持つ |
| 技術基準 | 欧州委員会が委任規則で定めた、活動ごとの基準を満たす |
6つの環境目的は第9条が定めています。開示の様式では目的ごとに略号を使います。
| 環境目的 | 略号 | 基準を定める委任規則 |
|---|---|---|
| 気候変動の緩和 | CCM | 気候委任規則(EU)2021/2139 |
| 気候変動への適応 | CCA | 同上 |
| 水と海洋資源の持続可能な利用と保全 | WTR | 環境委任規則(EU)2023/2486 |
| 循環経済への移行 | CE | 同上 |
| 汚染の防止と管理 | PPC | 同上 |
| 生物多様性と生態系の保護と回復 | BIO | 同上 |
活動には番号が付いています。たとえば新しい建物の建設は「CCM 7.1」、植林は「CCM 1.1」です。
実質的な貢献には2つの特別な型があります。1つは気候変動の緩和での移行活動で、低炭素の代わりがまだない活動です(第10条2項)。その分野で最も良い排出の水準であることなどが条件です。もう1つはほかの活動の貢献を直接可能にする「実現活動」です(第16条)。
著しい害の中身は、第17条が目的ごとに定めています。たとえば温室効果ガスを大きく増やすことや、生態系の状態を大きく損なうことです。製品やサービスの一生を通じた影響で判断します。
技術基準は確かな科学の根拠に基づき、できるだけ数値の基準にします(第19条)。移行活動の基準は少なくとも3年ごとに見直します。
最低限の保護措置 規則第18条は活動を行う会社に手続きを求めています。OECD多国籍企業行動指針と、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿う手続きです。ILOの8つの基本条約と、国際人権章典の原則も含みます。
欧州委員会の助言機関であるサステナブル・ファイナンス・プラットフォームは、2022年10月に報告書を出しました。この報告書は確かめる分野を4つにまとめています。労働者の権利を含む人権、贈収賄・汚職、税、公正な競争です。
| 報告書が示す、満たさないと見る目安 | 例 |
|---|---|
| 手続きがない | 4分野について、適切なデューデリジェンスがない |
| 結果として違反がある | 労働法や人権の裁判で、最終的に責任を認められた |
| 対話に応じない | OECDの各国連絡窓口が受理した案件で、相手との対話を拒む |
| 指摘に答えない | ビジネスと人権リソースセンターの指摘に、3か月以内に答えない。2年以内の指摘が対象 |
この報告書は助言で、法律上の拘束力はありません。
開示する指標と様式 規則第8条が事業会社に求めるのは、売上・CapEx・OpExのうち分類に合う活動に関わる割合の開示です。計算の方法と様式は、開示委任規則(EU)2021/2178が定めます。
| 指標 | 何の割合か |
|---|---|
| 売上 | 適合する活動に関わる製品・サービスから得た売上の割合 |
| CapEx | 適合する活動に関わる資産や工程への設備投資の割合 |
| OpEx | 適合する活動に関わる資産や工程への事業費の割合 |
改正後の附属書IIでは、事業会社の様式は2つです。様式1は3つの指標をまとめた表です。様式2は指標ごとに活動の内訳を示す表です。
| 様式1の主な列 | 書くこと |
|---|---|
| 合計(2) | 各指標の分母 |
| 適格の割合(3) | 適格な活動の割合。適合かどうかは問わない |
| 適合の金額と割合(4)(5) | 適合する活動の金額と割合 |
| 目的別(6)〜(11) | 6つの目的ごとの適合の割合。合計は(5)と同じ |
| 実現活動・移行活動(12)(13) | 適合のうち、それぞれの型に当たる割合 |
| 重要でない活動(14) | 重要でないとして評価しなかった活動の割合 |
| 前年度(15)(16) | 前の年度の適合の金額と割合 |
1つの活動が複数の目的に貢献する場合、様式2では各目的の列に書きます。様式1と様式2の「合計」の行では、二重に数えないよう、最も関係の深い目的1つだけで数えます。適格な割合がゼロの指標は、その指標の様式2を省けます。
2026年の簡素化の中身 欧州委員会は2025年7月4日、開示・気候・環境の各委任規則を改める委任規則を採択しました。これが委任規則(EU)2026/73で、2026年1月8日にEU官報に載りました。
| 項目 | 改正の内容 |
|---|---|
| 重要性の基準 | 10%未満かどうかは指標ごとに判断する。省いた活動の割合は、様式1の列(14)に書く |
| OpExの扱い | OpEx全体が事業の形に照らして重要でなければ、OpExの割合を出さなくてよい。総額と理由は書く |
| 様式 | データの項目を事業会社で64%、金融機関で89%減らした |
| 原子力とガス | 専用の様式(附属書XII)を削除した。指標ごとの項目は166から4に減る |
| DNSHの化学物質の基準 | 汚染の防止に関する共通の基準(付録C)を差し替えた |
OpExを重要でないとする判断の方法は、委任規則に決まっていません。欧州委員会の手引きの案は会計指令の重要性の考え方とそろえるよう求めています。
付録Cの差し替えでは、RoHS指令とオゾン層を壊す物質の例外を明確にしました。CLP規則で会社が自ら分類した物質を問う規定は、削られています。
新しい付録Cは、活動が特定の物質の製造や使用につながらないことを求めます。その中には0.1%を超える濃度の高懸念物質も入ります。対象は候補に載ってから18か月以上たった物質です。代わりの物質や技術がないことを評価して記録し、管理された条件で使う場合は除かれます。
業種の書き方では、EUの統計用の産業分類NACEを使うことが勧められていますが、義務ではありません。
売上が10%未満の国の事業をまとめて外すことは、手引きの案では条件付きでできます。IFRS第8号の開示と食い違わないこと、重要な活動を全体で評価すること、外した活動の業種を開示することが条件です。
1つの活動のうち、適合しない一部の国の分だけを重要でないとして外すことはできません。様式の注記は、重要な活動はその全体を評価するよう定めています。手引きの案は、一部を外すと適格や適合の割合がゆがむと説明しています。
経過措置 改正前のルールを選ぶ場合は、そのルールをすべて使います。たとえば銀行は詳しい様式と、改正前のGARの計算方法を使います。どちらのルールを使ったかは、報告の中に書きます。2024年度までは改正前のルールです。
改正後のルールで2025年度を報告すると、前年度の列には2025年に公表した数字を書きます。計算の方法が違うので、その旨を説明します。改正後の方法で計算し直した数字を、補足として載せることもできます。
決算期が暦年と違う会社も、2026年に公表する報告で改正前のルールを選べます。手引きの案は、10月に始まり10月に終わる年度を例に挙げています。
改正の手続き 欧州委員会は2025年2月26日に公表したオムニバスの中で、委任規則の案も示しました。委任規則は欧州議会と理事会の審査を経て官報に載りました。審査の期間は4か月で、2か月延ばせます。発効は官報に載った日から20日目で、数えると2026年1月28日です。
欧州委員会は2025年12月17日、よくある質問の形の手引きの案を原則承認しました。2026年3月4日には、銀行を受け持つEBA、証券のESMA、保険のEIOPAの3つの監督機関に、開示の指標の助言を求めました。活動ごとの基準を見直す案の意見募集は、2026年3月17日〜4月14日でした。
金融機関への影響 金融機関の指標の代表はGAR(グリーン資産比率)で、銀行の資産のうち適合する活動に向かう割合を示します。
| 項目 | 改正の内容 |
|---|---|
| 2年間の免除 | 2027年12月31日まで、決まった一文を年次報告書に載せれば、詳しい指標を出さなくてよい |
| 計算から外すもの | CSRDで報告しない会社への貸出や投資。任意で報告する会社などへの分は残る。デリバティブ、現金、のれんなども外す |
| 重要性の基準 | 使い道が分かる資産の合計の10%未満は、評価を省ける |
| 指標を出さない選択 | 銀行は、指標に関わる活動の純売上高が、グループの売上の10%未満なら、その指標を出さなくてよい |
| 延期した指標 | 手数料の指標と売買目的の資産の指標は、2028年1月1日から |
2年間の免除を使うには、タクソノミーに沿う活動があると主張しない旨の一文を載せます。免除は「すべてか無しか」で、一部の指標だけを出すことはできません。金融機関の2025・2026年度は、条件を満たせば詳しい指標の開示を免除されます。
2026年と2027年にグリーンボンドを出す金融機関は、免除の対象外です。SFDRで適合の割合をうたう金融商品を扱う場合も同じです。
取引先が重要でないとした活動について銀行が自分でデータを持っている場合、手引きの案ではどちらも選べます。取引先の開示に合わせて重要でないとするか、手元のデータで適合として報告するかです。
CSRDやSFDRとの関係 タクソノミーの開示義務はCSRDの対象と同じ会社にかかります。規則第8条が会計指令の第19a条と第29a条の会社を対象にしているためです。
| 論点 | 扱い |
|---|---|
| 開示の場所 | サステナビリティ報告の中で、タクソノミーの開示をする |
| 保証 | 監査人などの限定的保証の意見は、第8条の開示が守られているかも対象にする |
| 電子タグ | 第8条の開示にもタグを付ける。タグのルールができるまでは不要 |
タクソノミーはほかのEUの制度でも使われています。SFDR(金融機関のサステナビリティ開示規則)では、金融商品の適合の割合の開示に使います。最低限の保護措置はSFDRの「著しい害を与えない」原則に沿うことも求めています(第18条2項)。
ESRS-40aは、EFRAGが2026年7月に公表した域外グループ向けの報告基準の案です。案の説明によれば、タクソノミーの報告義務はこの報告には当たりません。
EU域内の売上が大きい域外のグループがグループ全体の報告をEUで出す場合も、ESRS-40aではタクソノミーの項目を削っています。ESRS-40aはまだ案で、内容は未定です。
今後の予定の細部 新しい活動の追加は、今回の見直しには入れず、後の取り組みで扱います。金融機関の免除が終わる2027年12月31日までに、欧州委員会は基準と開示の見直しを終える計画です。基準の見直しの案は、表現の整理、基準を満たすことの示し方、最近の法律や技術への対応を扱います。EBAの討議資料はOpExの指標を銀行の指標の計算でどう扱うかも論点にしています。
| 予定 | 状況 |
|---|---|
| 活動ごとの基準の見直し | 2026年3月に案を公表。2026年夏までの採択を予定していた。採択は未公表 |
| 開示の様式と計算方法を定める規則の見直し | 3つの監督機関の助言は2026年10月の予定とされていた。改正の時期は未定 |
| よくある質問の形の手引き | 2025年12月に案を原則承認。正式な版は未公表 |