更新日 2026年11月1日
EUの強制労働製品禁止規則は、強制労働(処罰の脅しのもとで、本人が望まずにさせられる労働)で作られた製品を、EUで売ることもEUから輸出することも禁じる規則です。会社の大きさも業種も産地も問わず、EUの中で作った製品も締め出されます。強制労働が使われたことを立証するのは調べる当局の側で、事業者にはどの段階でも意見を述べる権利があります。
| EUとの関わり | どこで分かるか | 備え |
|---|---|---|
| EUで売るか輸出する会社 | EUで製品を市場に出すか提供する、またはEUから輸出する。EUの利用者に向けてオンラインで売る日本の会社も当たる。EUの子会社や輸入者を通じた販売とネット販売の両方を見る | 強制労働で作られた製品を扱わず、当局の問いに期限までに答える |
| 部品や素材を納める会社 | 規則のいう製品供給者で、自社の品が取引先の製品に入ってEUで売られる。売り先の製品がどこへ行くかで分かる | 製品と作り手の情報を、当局や取引先に出せるようにする |
| 製品がEUに渡らない会社 | 製品がEUに渡らない。輸送サービスや、すでに利用者に届いた製品も対象外 | 答える相手も扱いを変える品もない。採掘や製造に付随するサービスへ広げるかは、EUの最初の評価で検討される |
自社でもEUで売り、部品も納めている会社は、売る側として当局に答える準備を先にします。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 2024年12月13日(済) | 規則が発効した。当局の体制や情報のシステム、データベース、指針などの条文はこの日から適用 |
| 2026年6月30日(済) | 欧州委員会が準備のための資料一式を公開し、指針などを載せるサイト、Forced Labour Single Portalが始まった |
| 2026年11月 | 欧州委員会が、電子・半導体、農業・食品、自動車、水産の業種別の説明会を開く |
| 2027年12月14日 | 禁止と調査、決定、税関の手続きなどを含む規則全体が適用される。情報の届け出の窓口が開く |
| 2029年12月まで | 欧州委員会が最初の評価をする。以後は5年ごと |
EUで売る会社
部品・素材の供給者
Q 監査やデューデリジェンスの仕組みがないと、それだけで違反になりますか。
A なりません。違反になるのは、強制労働で作られた製品を扱った場合で、規則は新しいデューデリジェンスの義務を設けていません。
Q リスクのデータベースに載った地域から仕入れると、すぐ違反ですか。
A すぐ違反にはなりません。欧州委員会がまとめたこのデータベースは目安で、網羅したものではなく、当局がリスクを評価するときの情報源の1つです。違反かどうかは、調査を経た決定で決まります。
規則のあらまし この規則は、規則(EU)2024/3015です。EU理事会が2024年11月19日に採択し、2024年11月27日に署名されました。2024年12月12日にEUの官報に載り、翌日の12月13日に発効しました。第3条は、強制労働で作られた製品について2つの行為を禁じています。EUの市場に出すか提供することと、EUから輸出することです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| いつから | 2027年12月14日。発効から36か月後 |
| 調べる側 | EUの外の疑いは欧州委員会、加盟国の中の疑いはその国の所管の当局(第15条) |
| 違反の扱い | 販売と輸出の禁止、市場からの撤去、廃棄を命じる決定を出す |
| 罰則 | 決定に従わない事業者への罰則を、加盟国が定める |
強制労働の定義は、ILOの第29号条約の第2条により、子どもの強制労働も含みます。規則は、国の当局が課す強制労働も扱います。これはILOの第105号条約の第1条が定める形の強制労働です。
製品と事業者の定義 製品とは、お金で値段を付けられ、取引の対象になるものすべてです(第2条6号)。採掘、収穫、生産、製造のどれで得たものかは問いません。業種、産地、EUの中で作ったか輸入したかも問いません(前文18項)。部品も含みます。
「強制労働で作られた製品」の定義は第2条7号にあります。事業者の定義は、製品をEUの市場に出すか提供する、または輸出する人や法人です(第2条9号)。
| 判定の基準 | 規則の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 会社の大きさ | 除外なし。調査や期限では大きさを考える | 第2条9号、第14条4項、第18条4項 |
| 業種・産地 | 除外なし。EUの中で作った製品も対象 | 前文18項 |
| 行為 | 市場に出す、提供する、輸出する | 第3条 |
| オンライン販売 | 遠隔販売の決まりで、EUの利用者に向けた販売はEU市場での提供とみなす | 第4条 |
| 利用者の手元の製品 | すでに利用者に届いた製品の撤去は扱わない | 第1条2項 |
| 輸送サービス | 対象外 | 前文18項 |
オンライン販売では、事業者が何らかの方法でEUの加盟国に向けて活動していれば、EUの利用者向けとみなします(第4条)。
供給者に求められうる情報 規則は、特定の記録を作って保存する義務を定めていません。一方で、当局は調査の前に、事業者に加えて、必要に応じてほかの製品供給者にも情報を求めます(第17条1項)。製品供給者の定義は第2条12号にあります。規則の条文からは、当局が求めうる情報として次のものが読み取れます。
| 場面 | 求められうる情報 | 根拠 |
|---|---|---|
| 予備段階 | 強制労働のリスクを見つけ、防ぎ、減らし、止め、救済するために取った行動。法令、欧州委員会の指針、国連・ILO・OECDの手引きにもとづく取り組みなど | 第17条1項 |
| 調査 | 製品を特定する情報。調べる部分の特定。製造者、生産者、製品供給者、輸入者、輸出者の情報 | 第18条3項 |
| 税関(指定された製品) | 製品を特定する情報、製造者や生産者の情報、製品供給者の情報 | 第27条2項 |
税関への提出がかかる製品は、第27条1項の委任規則で指定します。前文56項は、その情報の例を挙げています。製品の名前やブランド、型式やロット番号、製造番号、デジタル製品パスポートの識別子です。製造者や供給者については、名前、商号、連絡先、所在国の識別番号を挙げています。
事業者に求められる3つのこと 1つ目は、強制労働で作られた製品を扱わないことです(第3条)。事業者に課されるのは、この禁止を守ることです。規則は、EU法や加盟国の法律にある義務のほかに、新しいデューデリジェンスの義務を設けていません(第1条3項)。欧州委員会の説明のページにも、監査や報告の義務はないとあります。製品に強制労働がないようにする方法は、会社が選ぶという説明です。
2つ目は、当局の求めに答えることです(第17条、第18条)。当局は調査の前に、事業者に取り組みの内容を尋ねます。調査が始まると、当局は製品を特定する情報を求めます。期限は下の「調査から決定までの流れ」の表のとおりです。
3つ目は、決定に従うことです(第20条、第22条、第23条)。違反と決まると、次の命令が出ます。
| 命令 |
|---|
| その製品をEUの市場に出すこと、提供すること、輸出することの禁止 |
| すでに市場にある製品の撤去と、オンラインの画面にある掲載の削除 |
| 製品の廃棄。違反した部品を取り替えられる場合は、その部品の廃棄で、決定に取り替える部品が示される(第20条4項) |
廃棄は、まずリサイクルで行い、できなければ使えない状態にします。傷みやすい製品は、慈善や公益の目的に寄付し、できなければ使えない状態にします(第25条)。
EUにとって戦略上重要なサプライチェーンでは、廃棄の代わりに保留を命じられます(第20条5項)。保留の期間に強制労働をなくしたと示せれば、決定は見直されます。示せなければ、廃棄の命令がかかります。保留の費用は事業者が負います。
期限までに従わない場合は、当局が撤去や廃棄を執り行い、費用は事業者の負担です(第23条)。当局は罰則も科します。
立証の責任と事業者の権利 強制労働が使われたことを立証するのは、調べる当局の側です(前文47項)。当局は、予備段階と調査で集めた情報と証拠をもとに判断します。事業者には、すべての段階で意見を述べる権利があります(第16条2項)。
ただし、情報が集まらない場合は例外があります(第20条2項)。事業者や公的機関が次のことをすると、当局はほかの事実だけで違反と判断できます。
| ほかの事実だけで判断できる場合 |
|---|
| 正当な理由なく、求めた情報を出さない |
| 正当な理由なく、期限までに出さない |
| 調査を妨げる目的で、不完全な情報や誤った情報を出す |
| 誤解させる情報を出す |
| そのほかの方法で調査を妨げる。国が課す強制労働のリスクが見つかった場合を含む |
適用の範囲 規則の大半は、2027年12月14日から適用されます(第39条)。発効の日から適用されている条文は、第5条3項、第7条、第8条、第9条2項、第11条、第33条、第35条、第37条3項です。加盟国の当局の連絡先は第5条3項、罰則の通知は第37条3項、最初の評価は第38条が定めています。データベースと指針は、2026年6月14日までの公開が求められていました(第8条3項、第11条)。
規則の条文には、適用日より前に作られた製品や在庫についての、別の経過の決まりは置かれていません。すでに利用者に届いた製品は、もともと撤去の対象外です(第1条2項)。加盟国の当局の決定は、ほかの加盟国も認めて執行します(第20条8項)。
| 時期 | 中身 |
|---|---|
| 発効から12か月以内(2025年12月、済) | 加盟国が、所管の当局の名前と連絡先、担当の範囲を知らせる期限だった |
| 2026年11月 | 欧州委員会の業種別の説明会。12日 電子・半導体、17日 農業・食品、19日 自動車、24日 水産 |
| 発効から24か月以内、2026年12月 | 加盟国が、罰則の決まりを欧州委員会に知らせる期限 |
税関に情報を出すのは、欧州委員会が委任規則で指定した製品だけです。製品供給者とは、サプライチェーンの中で製品やその一部を作ったり加工したりする者です。
調査から決定までの流れ
| 段階 | 中身 |
|---|---|
| 1 リスクの評価 | 寄せられた情報やデータベースをもとに、疑いの強い製品から優先して選ぶ(第14条) |
| 2 予備段階 | 事業者に取り組みを尋ねる。事業者は30営業日以内に答え、当局は受け取りから30営業日以内に結論を出す(第17条) |
| 3 調査の開始 | 根拠のある懸念があれば調査を始め、3営業日以内に事業者へ知らせる(第18条) |
| 4 情報の提出 | 事業者は、当局が決めた30〜60営業日の期限までに出す。延長も申し出られる(第18条) |
| 5 現地の検査 | 例外の場合だけ。EUの外では、事業者の同意と相手国の異議がないことが条件(第19条) |
| 6 決定 | 調査の開始から9か月以内に、決定か調査の終了をめざす(第20条) |
| 7 決定に従う | 期限は30営業日以上。傷みやすい製品や動植物は10営業日以上(第22条) |
| 8 見直し | 事業者はいつでも見直しを求められる。当局は30営業日以内に判断する(第21条) |
「根拠のある懸念」は、客観的で確かめられる情報にもとづく、強制労働の疑いの合理的な兆しです(第2条16号)。当局は、疑いの規模と深刻さ、EUで売られる量、最終製品に占める疑いのある部分の割合で、優先度を決めます(第14条2項)。
懸念がないか、取り組みで懸念の理由がなくなったと判断すると、当局は調査を始めません(第17条5項)。その旨を事業者に知らせます。
税関も、決定を手がかりに輸入と輸出の製品を確かめ、該当しそうな製品は通関を一時止めます(第26条〜第30条)。4営業日以内に所管の当局が継続を求めなければ、ほかの手続きが済んでいる限り通します(第29条1項)。傷みやすい製品や動植物は2営業日です。通関されても、規則に合うことの証明にはなりません(第29条2項)。決定の対象と確かめられた製品は通さず、廃棄されます。
指針とリスクのデータベース Forced Labour Single Portalでは、指針を欧州委員会の告示として読めます(第11条)。デューデリジェンスなどの手引きは、特に中小企業を助ける内容にすることも求められています。
リスクのデータベース(第8条)は、ILOや国連、研究機関などの、独立した確かめられる情報にもとづきます。網羅したものではなく(第8条1項)、当局がリスクを評価するときの情報源の1つです(第14条3項)。国が課す強制労働の確かな証拠がある地域の業種も示します。事業者の名前を直接示す情報は公開しません。規則は、発効から18か月以内の公開を求めていました。
情報の届け出の窓口(第9条)には、だれでも違反の疑いを届け出られます。明らかに不完全な届け出や、根拠のない届け出、悪意のある届け出は退けます。届け出た人の身元は秘密として扱います(第32条)。
中小企業の支え(第10条)として、各国の当局は中小企業向けの相談の窓口を置きます。中小企業は規則の対象からは外れませんが、当局は調査の相手や期限を決めるときに、中小企業かどうかを考えます(第14条4項、第18条、第22条1項)。
UFLPA・CSDDDとの関係 米国のウイグル強制労働防止法、UFLPAは2021年12月23日に成立しました。中国の新疆ウイグル自治区で作られた製品などは、輸入が禁じられたものと推定されます。この推定は2022年6月21日から適用されています。
| 項目 | EUの規則 | 米国のUFLPA |
|---|---|---|
| 対象の行為 | EUの市場に出す、提供する、輸出する | 米国への輸入 |
| 地域の限定 | なし。EUの中で作った製品も対象 | 新疆ウイグル自治区で作られた製品と、一覧に載った事業体の製品 |
| 立証 | 当局が強制労働の使用を立証する | 違反と推定される。輸入者が反証する |
| 例外の条件 | ― | 指針に完全に従い、照会にすべて答え、明確で説得力のある証拠で強制労働がないと示す |
| 実施する機関 | 欧州委員会、加盟国の当局、税関 | 米国の税関・国境警備局CBP |
| 対象の一覧 | リスクのデータベース。会社の名前は公開しない | UFLPAの事業体の一覧。事業体の名前を載せる |
CSDDDは、会社にデューデリジェンスの手順を求めるEUの指令です。欧州委員会の見方では、2つの制度は補い合う関係です。CSDDDで集めた情報は、製品に強制労働がないかを調べる手がかりになると説明しています。
規則の違反の通報と通報者の保護には、EUの公益通報者保護指令、指令(EU)2019/1937が適用されます(第9条7項)。規則の第36条は、この指令の対象の法令に規則を加えました。
当局は、製品の安全などで使う市場監視の情報システムを使います(第7条)。税関の手続きは、規則(EU)No 952/2013のEU関税法典の仕組みの中で行います(第26条)。
最初の評価で検討すること 2029年12月までの最初の評価では、対象を、製品の採掘や製造に付随するサービスに広げる必要があるかも検討します(第38条2項)。強制労働を救済する専用の仕組みが必要かどうかも検討します(第38条4項)。
| 時期 | 項目 | 状態 |
|---|---|---|
| 未定 | リスクのデータベースの公開 | 欧州委員会のページは、2026年11月1日の時点で「開発中」と表示 |
| 2026年12月まで | 加盟国の罰則の決まり | 知らせる期限は規則で決定。各国の内容は未定 |
| 未定 | 税関に情報を出す製品を指定する委任規則 | 採択前 |