更新日 2026年11月1日
EUDRは、牛、カカオ、コーヒー、アブラヤシ、ゴム、大豆、木材の7産品と、それを使った一部の品について、森林破壊と無関係なものだけをEUで売れるようにする規則です。EUの消費を通じた世界の森林破壊を減らすためのもので、届け出をするのはふつうEUの輸入業者です。日本から品を送る会社が受け持つのは、生産した土地の緯度と経度などを仕入れ先から集め、その輸入業者に渡すところです。
| 事業者 | 確かめるところ | 受け持つこと |
|---|---|---|
| EUで初めて市場に出す会社 | 対象の品を初めてEUの市場に出すか、EUから輸出する事業者で、規則のいうオペレーター。ふつうはEUの輸入業者で、EUの子会社が輸入していれば当たる | 事前に調べ、結果をEUのシステムに届け出る |
| EUへ品を送る日本の会社 | 日本の輸出業者や生産者で、EUの市場に自ら品を出さない。送る品のHSコード、つまり世界の税関が共通で使う品目の番号を通関書類で確かめ、規則の附属書Ⅰの一覧と照らす | 生産地の情報を集め、EUの取引先に渡す |
| 一覧にない品だけを扱う会社 | 送る品が一覧にない。2023年6月29日より前に生産された品や、印刷された本と新聞も対象外。木材は旧制度との経過の決まりがある | 調べることも届け出もない。一覧の品は改正で増減するので、自社の品が加わらないかは見ておく |
一覧には、牛肉、チョコレート、パーム油と一部の誘導品、天然ゴムと新品のタイヤ・ゴムの手袋、大豆油、合板・紙・木製家具・木製パレットなどが載っています。7産品を使っていても、一覧にない品は対象外です。輸入もしているグループは、生産地の情報集めから始めます。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 2023〜2025年(済) | 規則が発効し、届け出のシステムが動き始めた。日本は低リスク国になった |
| 2026年12月30日 | 大・中規模の事業者に適用が始まる。EUの輸入業者は、品をEUの市場に出す前にDDSを出す。DDSは、調べた結果をEUのシステムに出す届け出 |
| 2027年6月30日 | 零細・小規模の事業者に適用が始まる |
| 2027年12月30日 | あとから加えたインスタントコーヒー、一部のパーム油誘導品、冷凍の牛の舌に適用が始まる |
依頼を受けた日本の輸出業者・生産者
EUの子会社が輸入者のグループ
Q 位置情報は、点1つで足りますか。
A 牛以外の産品で4ヘクタールを超える土地は、外周をなぞった多角形のポリゴンが必要です。それ以外の土地は、緯度と経度の点1つ以上で示せます。
規則のあらまし EUDRは規則(EU)2023/1115の通称で、2023年5月31日に成立し、2023年6月に発効しました。EUが消費する産品を通じた、世界の森林破壊を減らすことが目的です。規則の第3条は、対象の品について3つの条件を定めています。3つを全部満たさない品は、EUの市場に出すことも、EUから輸出することもできません。
| 第3条の条件 | 中身 |
|---|---|
| 森林破壊と無関係 | 2020年12月31日より後に、森林を農業に使い始めた土地の産品ではないこと。木材は、その日より後に森林劣化を起こしていないことも求められる |
| 合法性 | 生産国の関連法令に従って生産されていること |
| 届け出 | DDSか、簡素な申告で裏付けられていること |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改正 | 規則(EU)2024/3234で1年延期。規則(EU)2025/2650でさらに1年延期し、手続きを簡素にした |
| 罰則 | EU加盟国が定める。法人への罰金の上限は、EU域内の年間売上高の4%以上とする |
森林の定義も規則にあります。0.5ヘクタールを超え、高さ5メートル超の木があり、樹冠が10%を超えて地面を覆う土地です。主に農地や市街地として使う土地は除きます。森林破壊は、森林を農業の用途に変えることを指します。
規則のいう「デューデリジェンス」は、問題がないかを事前に調べて確かめる手続きです。その結果をEUの情報システムに出す届け出が、デューデリジェンス・ステートメント(DDS)です。
対象になる品 附属書Ⅰにない品は、7産品を使っていても対象になりません。
| 産品 | 附属書Ⅰの主な品(例) |
|---|---|
| 牛 | 生きた牛、生鮮と冷凍の牛肉、食用のくず肉 |
| カカオ | カカオ豆、カカオペースト、カカオバター、ココアパウダー、チョコレート |
| コーヒー | コーヒー豆。焙煎したものとカフェインを抜いたものを含む。コーヒーの殻 |
| アブラヤシ | パーム油、パーム核油、グリセリン、ステアリン酸などの一部の誘導品 |
| ゴム | 天然ゴム、新品のタイヤ、ゴムの手袋、その他の加硫ゴム製品 |
| 大豆 | 大豆、大豆粉、大豆油、大豆油かす |
| 木材 | 丸太、製材、合板、パルプと紙、木製家具、木製の梱包箱やパレット |
2025年の改正で、HSコード49類の印刷された本や新聞が対象から外れました。あとから加えた品は、委任規則(EU)2026/2102によるものです。
欧州委員会が2026年5月に出した委任規則の案は、牛の原皮と革、再生タイヤを外す内容でした。見本品や包装材、中古品を対象外とすることも示しました。
規則の発効日より前に生産された品には、規則がかかりません。木材だけは、EUの旧制度との間に経過の決まりがあり、下の「適用日」の項で述べます。
事業者の4つの立場 義務の重さは、取引の流れの中での立場で決まります。2025年の改正で、立場は次の4つになりました。
| 立場 | 判定の基準 | 主な義務 |
|---|---|---|
| オペレーター | 対象の品を初めてEUの市場に出すか、輸出する者 | デューデリジェンスをして、DDSを出す |
| 零細・小規模の一次オペレーター | 低リスク国の零細・小規模の事業者で、自ら育てたり収穫したりした品を出す者 | DDSの代わりに、1回だけ簡素な申告を出す |
| 下流オペレーター | DDSか簡素な申告で裏付けられた品を使って作った品を、市場に出すか輸出する者 | 仕入れ先と売り先の情報を集めて保存する。中小企業でなければ情報システムに登録する |
| トレーダー | 上の3つ以外で、対象の品をEUの市場で売る者 | 下流オペレーターと同じ |
EUの外の者が対象の品をEUの市場に出す場合に、EUで最初に扱うEUの中の者をオペレーターとみなす決まりは、第7条にあります。
零細・小規模と中規模の区分は、EUの会計指令2013/34/EUの区分を使います。
大企業でも、零細・小規模の一次オペレーターになれる場合があります。対象の産品に関わる部門の資産、売上高、従業員数を示し、3つのうち2つ以上で区分の上限に収まれば、なれます(第2条15a号)。ただし、低リスク国に拠点があり、その国で自ら生産した品に限ります。
日本の輸出業者に求められる情報 農林水産省は、EU向けの牛肉の輸出について資料を出しています。輸入業者から求められる飼った場所の情報として、農場名、住所、緯度と経度を最低限の情報に挙げています。資料は、森林破壊と無関係だと示す情報や、合法性の情報を求められる場合にも触れています。
オペレーターのデューデリジェンス オペレーターのデューデリジェンスは、情報の収集、リスクの評価、リスクの低減の3つの手順でできています(第8条)。
1つ目は情報の収集(第9条)です。品ごとに、次の情報を証拠とともに集め、5年間保存します。
| 集める情報 |
|---|
| 品の説明と商品名。木材なら樹種の一般名と学名 |
| 量。EUに出入りする品は正味の重さのキログラム |
| 生産国と、必要なら国の中の地域 |
| 生産したすべての土地の位置情報と、生産の日付か期間 |
| 仕入れ先と売り先の、名前、住所、メールアドレス |
| 森林破壊と無関係だと示す、十分で確かめられる情報 |
| 生産国の関連法令に従ったと示す、十分で確かめられる情報 |
位置情報は、少なくとも1つの点を、小数点以下6桁以上で書きます。牛以外の産品で4ヘクタールを超える土地は、ポリゴンで示します(第2条28号)。零細・小規模の一次オペレーターは、住所で代えられます。生産国は、産品を育てたり収穫したりした国を指します(第2条24号)。
生産国の関連法令とは、生産地の法律上の扱いに関わる法令です。土地の使用の権利、環境保護、森林の管理、第三者の権利の法令が入ります。労働者の権利、人権、先住民の事前の同意、税・汚職防止・貿易・関税の法令も入ります。
2つ目はリスクの評価(第10条)です。集めた情報を確かめ、問題のある品が混じるリスクを評価します。リスクがないか、無視できるほど小さいときだけ、市場に出せます。評価で考える点は、規則に14項目並んでいます。国のリスク区分、森林破壊の多さ、汚職や書類の偽造の多さなどで、サプライチェーンの複雑さも含みます。評価は記録し、少なくとも年に1回見直します。
3つ目はリスクの低減(第11条)です。リスクが無視できるほど小さくないときは、市場に出す前に手を打ちます。追加の情報や書類を求める、独立した調査や監査をする、などです。仕入れ先、特に小規模農家の対応を支えることも含められます。
中小企業でないオペレーターは、経営層の中に法令順守の責任者を置きます。社内の手順を確かめる、独立した監査の役割も必要です。
簡素なデューデリジェンス(第13条)を使うには、規則逃れや、ほかの国の品が混じるリスクが無視できるほど小さいと確かめる必要があります。リスクを示す情報を得たときは、評価と低減をします。
DDSの提出と、仕組みの整備 市場に出す前か輸出する前に、DDSを情報システムで出します(第4条)。DDSを出したオペレーターは、品が規則に合うことに責任を負います。
| DDSに書くこと(附属書Ⅱ) |
|---|
| オペレーターの名前と住所。EUに出入りする品なら、税関のEORI番号 |
| HSコード、品の説明と商品名、木材なら学名、量 |
| 生産国と、生産したすべての土地の位置情報。牛は飼ったすべての施設 |
| デューデリジェンスをして、リスクがないか無視できるほど小さいと確かめた旨の文言 |
| 署名 |
DDSを出すと、参照番号が付きます。オペレーターは、この参照番号を下流の取引先に伝えます。DDSの記録は5年間保存します。
1つのDDSで、何回分もの出荷をまとめられます。欧州委員会が2026年5月の報告で、ガイダンスとFAQで明らかにした点として説明しています。
オペレーターは、デューデリジェンスの手順をまとめた仕組みを作り、年に1回以上見直します(第12条)。中小企業でないオペレーターは、その仕組みについて毎年公表します。
輸入業者の手続きの流れ
| 手順 | 中身 |
|---|---|
| 1 対象か確かめる | 品のCNコードが附属書Ⅰにあるかを見る |
| 2 情報を集める | 仕入れ先から、生産地の位置情報、生産の時期、法令に従った証拠を受け取る |
| 3 評価と低減 | リスクを評価し、必要なら追加の書類や監査で下げる。原料が全部低リスク国なら省ける |
| 4 DDSを出す | 市場に出す前に、情報システムで出し、参照番号を受け取る |
| 5 通関 | EUの通関の手続きで、参照番号を税関に示す |
| 6 下流に伝える | 参照番号を、売り先に伝える |
| 7 保存と見直し | 記録を5年保存する。評価と仕組みを年1回以上見直す |
下流オペレーター、トレーダー、零細・小規模の義務 下流オペレーターとトレーダーは、DDSを出しません(第5条)。次の情報を集め、5年間保存し、当局に求められたら出します。
| 集める情報 |
|---|
| 仕入れ先の名前、住所、メールアドレス |
| 仕入れ先がオペレーターのときだけ、DDSの参照番号か、簡素な申告の識別番号 |
| 売り先の名前、住所、メールアドレス |
中小企業でない下流オペレーターとトレーダーは、情報システムに登録します。規則に合わない疑いを示す情報を得たら、当局に知らせます。中小企業でない場合、根拠のある懸念があれば、デューデリジェンスがされたかを確かめます。
欧州委員会の報告によれば、下流の会社の参照番号の扱いは受け取るだけの義務です。参照番号が届かなければ、仕入れ先はオペレーターでないとみなしてよい、という整理です。ただし、仕入れ先がオペレーターなら、参照番号を受け取って保存します。
零細・小規模の一次オペレーター(第4a条)は、DDSを品ごとに出す代わりに、1回だけ簡素な申告を出します。申告には、名前と住所、品のHSコード、年間の見込みの量、生産地を書きます。生産地は、位置情報の代わりに住所でも構いません。EUや加盟国の法律にもとづく既存のデータベースに必要な情報があれば、申告も要りません。
適用日と、2度の延期 規則の主な義務の条文(第3条〜第13条など)は、2026年12月30日から適用されます。2024年と2025年の改正で、それぞれ1年ずつ延びました。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2023年6月29日(済) | 規則が発効した |
| 2024年12月4日(済) | 欧州委員会の情報システムが動き始めた |
| 2025年5月22日(済) | 欧州委員会が低リスクと高リスクの国を決め、日本は低リスクになった |
| 2026年12月30日 | EU木材規則EUTRが廃止される |
| 2029年12月31日 | 古い木材製品へのEUTRの経過の扱いが終わる |
| 2030年6月30日 | 規則全体の見直しの報告の期限。以後は5年ごと |
| 対象 | 当初 | 2024年改正後 | 2025年改正後(現在) |
|---|---|---|---|
| 大・中規模の事業者 | 2024年12月30日 | 2025年12月30日 | 2026年12月30日 |
| 零細・小規模の事業者 | 2025年6月30日 | 2026年6月30日 | 2027年6月30日 |
| 委任規則(EU)2026/2102で加えた品 | ― | ― | 2027年12月30日 |
当初の日付は、発効から18か月後と24か月後でした。いまの零細・小規模の日付を使えるのは、2024年12月31日までにその規模で設立された事業者です。零細・小規模の事業者でも、EU木材規則の対象の木材製品を扱う場合は別です。この場合は、大・中規模と同じ2026年12月30日から適用されます。
EUTRは規則(EU)No 995/2010で、木材を市場に出す事業者の義務を定めた旧制度です。2023年6月29日より前に生産された木材製品には、経過の決まりがあります。2026年12月30日以降に市場に出す分には、2029年12月31日までEUTRがかかります。2029年12月31日以降に市場に出す分は、EUDRの第3条に合わせる必要があります。
2029年12月1日は、税関と情報システムをつなぐ仕組みを整える期限です。
2025年の改正は、2026年4月30日までに簡素化の見直しをするよう求めていました。欧州委員会は2026年5月4日に報告を出しました。その中で、規則の本文をさらに改正する提案は適切でないと結論づけました。
情報システムと当局の検査 情報システムは、規則の第33条にもとづく欧州委員会のシステムです。2024年11月6日に登録が始まりました。欧州委員会は2026年5月の報告で、2025年の改正に合わせてシステムを一時止めたと述べました。再開は2026年6月の予定とされており、簡素な申告の受付などを加える計画でした。
加盟国の当局は、毎年、決まった割合以上の事業者を検査します。割合は、原料の生産国のリスク区分で変わります。
| 生産国の区分 | 毎年の検査の最低の割合 |
|---|---|
| 低リスク | オペレーターなどの1% |
| 標準リスク | オペレーターなどの3% |
| 高リスク | オペレーターなどの9%と、品の量の9% |
ここでの「オペレーターなど」には、中小企業でない下流オペレーターとトレーダーも入ります。割合は産品ごとに満たします。違反が見つかると、当局は是正を求めます。是正には、出荷の停止、回収、寄付や廃棄が含まれます。罰則には、罰金のほか、品と売上の没収があります。
国別のリスク区分 規則の第29条は、国や地域を、低リスク、標準リスク、高リスクの3つに分ける仕組みを定めています。区分は、森林破壊と森林劣化の速さ、対象の産品の農地の広がり、生産の傾向で決めます。欧州委員会は、2025年5月22日の実施規則(EU)2025/1093で、低リスクと高リスクの国を決めました。どちらにも入らない国は、標準リスクです。
| 区分 | 国の数 | 例 |
|---|---|---|
| 高リスク | 4 | ベラルーシ、北朝鮮、ミャンマー、ロシア |
| 標準リスク | 51 | 上の2つに入らない国 |
| 低リスク | 140 | 日本、EU加盟国など |
国の数は、欧州委員会の区分の一覧のページによります。規則は、新しい根拠があれば一覧を見直すよう定めています。
EUTR・FLEGT・認証制度との関係 EUDRは、EUTRを廃止して置き換える規則です。木材については、法令に従った生産に加えて、森林破壊と無関係であることも求めます。EUTRは2026年12月30日に廃止され、上の経過の決まりだけが残ります。
FLEGTライセンスは、規則(EC)No 2173/2005の仕組みで出される木材の許可証です。有効なライセンスのある木材製品は、生産国の法令に従ったものとみなされます(第10条第3項)。森林破壊と無関係かどうかの確認は、別に必要です。
森林の認証を持っていても、調べる手続きは省けません。認証の情報をリスクの評価を補う情報に使える決まりは第10条第2項(n)にあり、第9条の情報の要件を満たすことが条件です。
サプライチェーンの調査を求める別のEU法令の対象になる会社もあります。その会社は、EUDRの毎年の公表を、別の法令の報告にまとめられます(第12条第3項)。
| 時期 | 項目 | 状態 |
|---|---|---|
| 未定 | 一覧から外れる品。案では牛の原皮と革、再生タイヤ、見本品、包装材、中古品 | 未定 |
| 2026年12月まで | 生産国の法令と認証制度をまとめた情報を公開 | 欧州委員会の計画 |
| 未定 | 国別のリスク区分の見直しの時期 | 必要に応じて見直すとだけ規定 |