更新日 2026年11月1日

制度の解説|金融

ESG評価・格付けの規制(EUの規則と金融庁の行動規範)

EUと日本の金融庁が、ESG評価(会社の環境・社会・ガバナンスの取り組みを、外部の機関が点数などで表すもの)を出す機関の決まりを定めました。EUの規則は正式な題に「透明性と健全性」を掲げ、評価の方法を公表させるとともに、別の仕事の利害で評価がゆがむ利益相反を防ぎます。評価を受ける企業に義務はなく、変わるのは評価機関の側の手順です。

制度の解説ESG格付け

評価される側か、評価する側か

評価を受ける企業 評価機関からアンケートや評価の連絡が届いていれば当たり、評価を頼んだかどうか、情報を出したかどうかは問いません。連絡を受ける窓口を決めて公表します。

日本で事業をするESG評価・データ提供機関 金融庁のサイトの受け入れ表明の一覧に、CDP、MSCI Solutions、FTSE Russellなど30機関が載っています。名前のある機関は、行動規範の原則ごとに、実施するか、しない理由を説明します。

EUで評価を出す評価会社 EUの会社で評価を公表しているか、契約でEUの金融機関などに評価を配っている会社で、EU域外の会社も含みます。EUの証券市場を監督するESMAの認可などを受けます。日本とEUの両方で事業をする機関は、罰金のあるEUの規則への対応が先です。

評価が出る前に連絡が来る

  1. 評価の前に連絡が来る EUで認可を受けた評価会社は、初めて評価を出す2営業日以上前に、評価を受ける会社へ知らせます。返事を待たずに出せるので、連絡が担当に届くのが遅れると、指摘する前に評価が出ます。
  2. 方法の公表とE・S・G別の評価 評価会社は方法を17項目で公表し、E、S、Gを別々に評価します。まとめる場合は配分の比率を示すので、どの開示が点数に効くかを各社の公表から読めます。
  3. 名簿に載る会社の評価だけが出回る 申請と届け出の期限が過ぎたあと、第三者が載せたり配ったりできるのは、申請か届け出をしてESMAの名簿に載る会社の評価だけです。

申請と届け出の期限は11月2日

時期すること
2022年12月15日(済)金融庁が行動規範を公表
2026年7月2日(済)EUの規則の適用が始まる。この日以後に出す評価から、評価機関が評価対象へ事前に連絡する
2026年11月2日(済)既存の評価会社が認可などを申請し、小規模な会社が届け出をする期限
2028年1月1日評価会社が方法の開示などを、EUの共通の情報窓口にも出す

評価を受ける企業は、連絡の窓口を決めて公表する

  1. アンケートや評価の連絡が届いた機関を書き出し、それぞれESMAの名簿に載っているかも見ます。
  2. 投資家への説明を担うIRと広報で、評価機関からの連絡を受ける窓口を決め、メールアドレスなどを公表します。窓口がないと連絡はIRか広報の部門に来ることがあり、ESMAのQ&Aはこの2つを連絡先の例に挙げています。金融庁の行動規範も、企業に問い合わせの窓口の開示を求めています。
  3. 各機関が公表している評価の方法と苦情の手順を読み、社内で共有します。
  4. 自社のESG情報を分かりやすく開示し、更新日を示します。

EUで評価を出す会社は、小規模に当たるかから

  1. 認可でなく届け出で名簿に載れる小規模な会社に当たるかを、細かい決まりの「小規模な会社の軽い制度」の3つの基準で確かめます。
  2. 認可を受ける会社は、評価対象への事前の連絡と、求められたデータを無料で見せる手順を作ります。

連絡が来たときにできること

Q 評価機関から、評価を出す前の連絡が来ました。何ができますか。
A 事実の誤りを評価機関に知らせられ、求めれば使われたデータを無料で見られます。評価機関に評価を直す義務はありませんが、ESMAのQ&Aは、出す前に受けた指摘をよく検討するよう求めています。納得できない場合は、各機関の苦情の手順で申し立てられ、データの出どころ、方法の当てはめ方、評価が実態を表すかが対象です。

Q 評価機関から、評価を上げるための有料の助言を勧められました。
A EUで認可を受けるESG評価会社は、企業へのコンサルティングを行えません。ESMAのQ&Aは、評価を上げる手伝いをその例に挙げています。

細かい決まり対象外の評価、域外の会社の道、利益相反、行動規範の6原則

2つの制度の違い EUの規則は規則(EU)2024/3005で、正式な題は「ESG評価活動の透明性と健全性に関する規則」です。日本の行動規範は、金融庁の「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」です。

項目EUの規則金融庁の行動規範
性格EU全体に直接かかる法律受け入れを表明した機関だけが従う規範
誰にEUで事業をするESG評価の会社日本で事業をするESG評価とデータの機関
監督ESMAが認可し、検査し、罰金を科す監督や罰則はない
守り方すべての規定を守る原則ごとに、実施するか、しない理由を説明する
対象のサービス評価のみ。ESGデータの提供は対象外評価とデータの両方

EUの規則は証券監督者国際機構、IOSCOの勧告をもとにしたと、欧州委員会が説明しています。金融庁の行動規範も、IOSCOの2021年11月の報告書を踏まえて作られました。

何が「ESG評価」に当たるか 規則は、ESG評価を「意見か点数、またはその組み合わせ」と定めています。決まった方法と、段階の区分に基づくものが当たります。「評価」「意見」「スコア」と、どう呼んでいるかは問いません。

条件対象か
EUの会社が、評価をウェブサイトなどで公表する、または契約でEUの金融機関などに配るEUの規則の対象
EU域外の会社が、契約でEUの金融機関などに配るEUの規則の対象
公表も配布もしない内部向けの評価、ESGデータそのもの、信用格付けEUの規則の対象外
日本で事業をするESG評価とデータの機関金融庁の行動規範の対象。受け入れるかは各機関が決める
評価を受ける企業どちらの制度でも義務はない。変わるのは評価機関の側の手順

ESMAのQ&Aによると、段階の区分とは、最低と最高を含む2つ以上の区分で順位を表すもので、数字、文字、色などで表せます。上の表のほか、次のものも対象外です。

区分規則の扱い
信用格付けの中で使うESGの点数対象外
セカンドパーティ・オピニオンなど債券の外部評価ESG評価を含まなければ対象外
認証のためだけの評価で、投資の分析に使わないもの対象外
認可を受けた会社の評価を、第三者が載せ直す対象外
非営利の団体が、商業目的でなく出す評価対象外。ただし企業や利用者から料金を取ると対象

配る先の「金融機関など」には、EUの会計指令の対象の会社や、EUと加盟国の公的機関も入ります。評価対象は、会社、金融商品、公的機関などです。

EUで事業をするための道 EUで評価を出すには、次のどれかが必要です。EUの会社か、EU域外の会社かで、使える道が分かれます。

道使える会社中身
認可EUの会社ESMAが審査し、EU全体で有効な認可を出す
小規模な会社の軽い制度EUの小規模な会社届け出てESMAの名簿に載る。3年間
同等性EU域外の会社その国の規制がEUと同等と、欧州委員会が決めた場合
承認・エンドースメントEU域外の会社同じグループのEUの認可会社が、域外の評価を引き受ける
承認・レコグニションEU域外の小さな会社EUに法定代理人を置き、ESMAが認める

エンドースメントでは、EUの会社が自前の事務所と銀行口座を持つことが条件です。分析と判断をする体制がEUにあることも求められます。引き受けた評価の責任は、EUの会社が負います。

レコグニションを使えるのは、売上が小さい域外の会社です。会計指令が小会社に定める上限額を、直近3年続けて下回ることが条件です。グループに属する場合は、グループの連結の売上で判定します。規則は、同等性の決定を出す権限を欧州委員会に与えています。

小規模な会社の軽い制度 ESMAは、会計指令の小会社の基準で判定します。

ESMAが示す基準上限
総資産500万ユーロ以下
純売上高1,000万ユーロ以下
平均従業員数50人以下

3つのうち2つを超えなければ、小規模に当たります。個社と、必要な場合はグループの両方で見ます。中規模以上のグループに属する小さな会社は使えない、というのがESMAのQ&Aの考え方です。

軽い制度でかかる規定は、一部に限られます。独立性、事業の利益が評価をゆがめない手続き、評価の方法の質です。方法の開示(第23条・第24条)と、ESMAの監督(第32〜37条)もかかります。事前の連絡(第15条12項)は入っていないため、規則の文面上、軽い制度の会社にこの義務はかかりません。

ESMAは届け出から90営業日以内に、登録するかを決めます。登録から3年たつか、小規模でなくなると、規則のすべてがかかります。その場合は、6か月以内に認可を申請します。

認可を受けた会社に求められること 評価を受ける企業に関わる規定が中心です。

項目求められること条文
独立性政治や経済の影響から独立して評価する15条1項
方法の見直し評価の方法を、少なくとも年1回見直す15条8項
自社の意見の明示評価が自社の意見だと、はっきり書く15条11項
事前の連絡初めて評価を出す2営業日以上前に、評価対象に知らせる15条12項
データの提供評価対象が求めれば、使ったデータなどを無料で見せる15条12項
苦情の受付苦情の手順をウェブサイトで公表し、評価に関わらない人が調べる19条
懸念への回答名前を示した懸念に、30営業日以内の回答に努める。小規模な会社を除く20条
方法の公表方法、モデル、主な前提をウェブサイトの別の区画で公表する23条1項
E・S・Gの分割E、S、Gを別々に評価する。まとめる場合は配分の比率を示す23条2項・3項
利用者と評価対象への開示より細かい方法とデータの扱いを、継続して知らせる24条
記録評価の記録を5年以上残し、後から再現できる形にする18条
料金料金を公正で、差別のないものにする27条

事前の連絡で見せる情報には、業種の区分、データの出どころ、推計の使い方、データを最後に更新した日が入ります。営業秘密に当たる情報までは開示しなくて構いません。

公表する方法の中身は、附属書IIIの1に17項目で並んでいます。主なものは次のとおりです。

公表する項目(抜粋)中身
方法の概要過去を見る評価か将来を見る評価か、対象とする期間
データの出どころCSRDの報告を使うか
評価の目的リスク、影響、またはその両方のどれを測るか
表し方絶対評価か、相対評価か
AI使っているか、その限界とリスク
利益相反主なリスクと、その対策

規則の附属書IIIの2は、評価対象に知らせる細かい情報を定めています。見出しは「会計指令の範囲内の評価対象」です。評価対象から頼まれずに出す評価は、その旨を目立つように書きます。評価対象が知らされていたか、手続きに加わったかも書きます。

利益相反の管理と、事業の分離 規則は、評価の会社が自ら行えない事業を定めています(第16条)。

事業扱い
投資家や企業へのコンサルティング行えない
信用格付け行えない
財務諸表の法定監査、サステナビリティ報告の保証行えない
ベンチマークの提供原則行えない。対策をESMAが認めれば可
投資サービス、銀行や保険の業務業務を分け、利益相反を防ぐ対策をとれば可

ESMAのQ&Aが挙げる分けるべきコンサルティングには、開示やKPIについての助言も入ります。税務や会計の助言のように評価から遠いものは、この例に当たりません。

評価に直接関わる担当者には、個人の取引も制限されます。担当する会社の株などは売買できません。評価した会社の幹部には、評価から9か月は就けません。規則に違反すると、ESMAは罰金を科せます。上限は、その会社の年間の純売上高の10%です。

金融庁の行動規範 行動規範は6つの原則と、その下の指針でできています。受け入れた機関は、指針ごとに守り方を説明します。すべてを守ることは求められておらず、実施しない指針はその理由を説明し、説明は各機関が一覧に載せたページで読めます。

原則主な指針
1 品質の確保方法を定めて開示する。データの取得と更新の時期を開示する
2 人材の育成専門の人材を確保し、能力を育てる
3 独立性と利益相反営業と評価の部門を分ける。有償サービスを使わないと答えられない調査にしない
4 透明性の確保評価の目的と基本の方法を一般に明らかにする
5 守秘義務非公開の情報を守る方針と手続きを定める
6 企業とのコミュニケーション調査の時期を前もって伝える。統一した窓口を置く

原則6の指針は、評価を受ける企業に直接関わります。主な中身は次の4つです。

  1. 公開情報などを前もって入力し、企業には確認を求めます。
  2. 評価を出すときは、重要な情報源を企業に伝えます。事実の誤りを確かめる時間を取ります。
  3. 企業から重要な指摘があれば、データの正確さを確かめさせ、誤りは直します。
  4. 企業とどう関わるかを「対話の手順」として開示します。

行動規範には、企業への提言も参考として載っています。ESG情報を分かりやすく開示し更新日を示すことと、評価機関からの問い合わせの窓口を開示することです。

受け入れ表明の一覧と調査の結果 金融庁は、受け入れを表明した機関の一覧を、原則として半期ごとに更新しています。一覧には、評価とデータのどちらで受け入れたかと、各機関の表明のページと原則ごとの対応を書いたページのアドレスが載っています。2026年6月30日時点で30機関で、サスティナリティクス・ジャパン、エコバディスなども入っています。

2026年6月30日の調査は、行動規範に「3年後をめどに見直しを検討する」とあったために行われました。報告書によると、企業からは改善を認める声がありました。一方で、方法の透明性、アンケートの事務の負担、データの正確さに注文が続いています。金融庁は、日本での規制の導入や規範の改訂を「現時点では慎重に検討」とまとめました。代わりに、各機関の対応の事例集を付けています。

官報への掲載から最初の登録まで

時期できごと
2024年12月12日EUの規則がEU官報に載る
2025年1月1日規則が発効
2025年10月15日ESMAが認可、事業の分離、開示の細則の最終案を公表
2026年6月30日金融庁が行動規範の対応の状況を調べた結果を公表
2026年7月2日届け出の受付が始まる
2026年8月2日小規模以外の既存の評価会社が、続ける意思を届ける期限
2026年8月13日小規模な会社の最初の登録
2029年8月13日最初に登録した小規模な会社の3年の期限

EUの経過措置 規則の発効の時点ですでにEUで事業をしていた会社は、届け出をすれば、ESMAが決めるまで事業を続けられます。期限までに届け出や申請をしなかった既存の会社は、事業をやめます。発効後に始めた会社は経過措置を使えず、始める前に認可などを受けます。

ESMAのQ&Aは、発効後にできた会社でも経過措置を使える場合を示しています。発効時に事業をしていた会社と、子会社などのつながりがある場合です。

ESMAは、小規模な会社に9月2日までの届け出を勧めていました。小規模以外の会社には、9月2日から11月2日の間の申請を勧めていました。

2営業日前の連絡の義務は、2026年7月2日以後に出す評価にかかります。それより前に出た評価は、7月2日以後に更新するとき、少なくとも1回は連絡します。

認可の申請では、ESMAが25営業日以内に、書類がそろっているかを確かめます。そろったと知らせてから90営業日以内に、認可するかを決めます。期間は120営業日まで延ばせます。

ESMAは、届け出た会社の一覧を公表しています。2026年10月16日の更新では114社です。小規模な会社として登録された会社は、10月28日の更新で51社です。

信用格付け、SFDR、英国などとの関係

制度関係
EUの信用格付けの規則信用格付けは対象外。評価の会社は信用格付けを行えない
SFDR運用会社が宣伝資料で自社の評価を見せるとき、方法の情報をウェブに載せる
CSRDとESRS評価がCSRDの報告を使うか、ESRSの項目に合うかを開示する
EUタクソノミーE評価がタクソノミーの適合率とどう関係するかを、利用者などに知らせる
英国の規制金融庁の報告書によると、2028年6月の適用開始を目指している
シンガポールと香港金融庁の報告書によると、規制ではなく行動規範で対応を続けている

規則は、ESGデータの提供を対象に加えるべきかを、見直しの論点に挙げています。

規則の見直しと日本の同等性

項目状態
規則の見直し欧州委員会が、発効から4年以内に評価する。中身は未定
金融庁の行動規範の改訂現時点では慎重に検討。動向の分析を続け、必要なら検討する。時期は未定
日本の行動規範がEUの規制と同等と認められるか。認められると、日本の評価機関がEUで評価を出す道の1つになる未定