更新日 2026年11月6日
経済安全保障推進法は、国が半導体や蓄電池など16の物資を特定重要物資に指定し、国内での生産や備蓄を進める会社の計画を認定して助成する法律です。原材料や物資を国外に頼りすぎると、相手の国の動き一つで供給が止まり、暮らしや経済が立ち行かなくなるためです。2026年9月の改正で、物資を買う会社にも国や供給元と連携する努力義務がかかり、供給が危ういときは国から情報の提供などを求められるようになりました。
16物資は、蓄電池、半導体、航空機の部品、船舶の部品、肥料、重要鉱物、クラウドプログラム、工作機械・産業用ロボット、先端電子部品、永久磁石、抗菌性物質製剤、天然ガス、無人航空機、人工衛星、ロケットの部品、医療機器です。部素材や原料まで含むので、自社の品が当たるかは「認定と助成のしくみ」にある品目の表で照らします。
| 立場 | 見分け方 | すること |
|---|---|---|
| 物資を作る会社(認定を受けた会社を含む) | 自社の製品が16物資か、その部素材・原料に当たる | 認定を受けたら計画どおり生産や備蓄を進める。認定がなくても、供給が危ういときは計画の提出を促されることがある |
| その物資を買う会社 | 購買の品目に、16物資や、それを使った部品が入っている | 仕入れ先が止まったときの手当てを用意し、国から状況の説明を求められたら答える |
| 関係の薄い会社 | 16物資を作りも買いもしない | 今は手続きも届け出もない。物資は毎年のように追加されるので、自社の品が加わるかを見ておく |
認定のもとになる供給確保計画は、物資を作る会社が設備の増強や備蓄、研究開発の中身をまとめて所管の大臣に出す計画です。認定を受けると助成を申請できます。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年(済) | 8月に法律が施行され、12月に国が最初の11物資を指定した |
| 2024年2月(済) | 先端電子部品を追加し、重要鉱物にウランを加えた |
| 2025年12月(済) | 人工呼吸器、無人航空機、人工衛星、ロケットの部品を追加し、船舶の部品に船体、先端電子部品に磁気センサーを加えた |
| 2026年9月18日(済) | 改正法が施行され、買う会社の努力義務と国の協力要請が始まった |
| 2026年10月(済) | 医療機器に体外式膜型人工肺を加えた |
その物資を買う会社
物資を作る会社 認定を受けた会社は、原材料の供給元の撤退や海外移転など、計画の実施が難しくなりそうな事情を早めに所管の省へ相談します。改正で、そうした場合に国が関係者へ協議や対応の見直しを求められるようになったためです。
Q 認定を受けていない会社にも、国から求めが来ますか。
A 来ることがあります。供給に支障が出そうなときに国が協力を求める相手は「広く関係者」で、認定を受けた会社に限られません。
Q 中国のレアアースの輸出規制とは関係がありますか。
A あります。永久磁石と、レアアースを含む重要鉱物は、どちらも特定重要物資です。規制の中身と11月の期限は中国のレアアースなどの輸出規制にあります。
物資ごとの認定件数 2026年11月4日時点の件数です。
| 物資 | 認定 |
|---|---|
| 蓄電池 | 42件 |
| 半導体 | 30件 |
| 航空機の部品 | 19件 |
| 船舶の部品 | 18件 |
| 肥料 | 13件 |
| 重要鉱物 | 12件 |
| クラウドプログラム | 11件 |
| 工作機械・産業用ロボット、先端電子部品、永久磁石 | 各6件 |
| 抗菌性物質製剤 | 2件 |
| 天然ガス、無人航空機、人工衛星、ロケットの部品 | 各1件 |
| 医療機器 | 0件 |
| 合計 | 169件 |
国はこれまで、16物資のために計2兆5,643億円の予算を確保しています。
特定重要物資の要件 国民の生存に欠かせないか、暮らしや経済活動が広く頼っている物資で、物資そのものや原材料、供給に欠かせない役務を外部に頼りすぎているか、そのおそれがあるものが対象です。外部の行為で国と国民の安全が損なわれる事態を防ぐため、安定供給の確保が特に必要と認められるものを政令で指定します(施行令第1条)。
認定から助成まで 所管の大臣(供給事業所管大臣)が物資ごとに「安定供給確保取組方針」を公表しています。会社はこれに沿って供給確保計画を作り、大臣の認定を受けます。助成は認定のあと、物資ごとに指定された安定供給確保支援法人か安定供給確保支援独立行政法人(重要鉱物ではエネルギー・金属鉱物資源機構など)へ申請します。2026年11月4日時点で、認定169件の最大助成額の合計は約1.82兆円です。
| 支援の種類 | 中身 |
|---|---|
| 助成 | 支援法人などが、認定を受けた会社の取組に助成する |
| 利子補給 | 認定を受けた会社に融資する金融機関へ、利子を補給する |
| ツーステップローン | 日本政策金融公庫法の特例 |
| 中小企業向けの特例 | 中小企業投資育成株式会社法と中小企業信用保険法の特例 |
物資ごとの主な品目 所管の省が取組方針で示す主な品目は次のとおりです。
| 物資 | 主な品目 |
|---|---|
| 蓄電池 | 蓄電池、製造装置、部素材 |
| 半導体 | 従来型半導体、製造装置、部素材、原料(黄リン、ヘリウムなど) |
| 航空機の部品 | 大型鍛造品、鋳造品、炭素繊維、スポンジチタンなど |
| 船舶の部品 | エンジン、クランクシャフト、ソナー、プロペラ、船体 |
| 肥料 | りん酸アンモニウム、塩化カリウム |
| 重要鉱物 | リチウム、ニッケル、コバルト、レアアース、ガリウム、ウランなど |
| クラウドプログラム | 基盤クラウドプログラム、高度な電子計算機 |
| 工作機械・産業用ロボット | 数値制御装置(CNC)、減速機、ボールねじ、リニアガイドなど |
| 先端電子部品 | 積層セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ、SAW・BAWフィルター、磁気センサー |
| 永久磁石 | ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石など |
| 抗菌性物質製剤 | βラクタム系抗菌薬 |
| 天然ガス | 液化天然ガスの確保 |
| 無人航空機 | 機体と、バッテリー・モーターなどの部品 |
| 人工衛星 | 衛星バス、太陽電池セル |
| ロケットの部品 | フェアリング、固体ロケットモータ、燃料供給系部品 |
| 医療機器 | 人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO) |
物資ごとの支援の中身 蓄電池・永久磁石は生産基盤の強化と技術開発、半導体は生産基盤と原料の供給基盤の強化、肥料は備蓄、抗菌性物質製剤は原材料と原薬の生産基盤の強化と備蓄、重要鉱物は探鉱・鉱山開発・精錬能力の強化と技術開発、天然ガスは戦略的余剰液化天然ガスの確保、クラウドプログラムはプログラム開発と利用環境の整備が中心です。
改正の中身 正式な名前は「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律及び株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律」です。2026年6月に公布され、9月18日に施行されました。物資の章では、役務の指定と、努力義務・協力要請のほかに、政府が施策の実施状況を評価して安定供給確保基本指針を見直すことも定めました。
| 国が求められること | 場面 |
|---|---|
| 資料・情報の提供、状況の説明を求め、供給確保計画の提出を促す | 特定重要物資などの安定供給に支障が出るおそれがあるとき |
| 資料・情報の提供、協議、対応の検討や方向性の見直しを求める | 認定された供給確保計画の実施が難しくなるおそれがあるとき |
国が役務の例に挙げる光海底ケーブルには国際通信の99%が通りますが、敷設船が足りなければ敷けません。役務の支援は、役務の提供基盤の整備や技術開発が対象です。物資の供給に欠かせず、もっぱらその供給に使われる役務で、外部への依存や途絶のおそれがあるものに限ります。
物資のほかの改正 基幹インフラの制度(重要な設備の導入や維持管理の委託を国が事前に審査する制度)に、医療情報基盤や診療報酬審査支払機構の医療DX関連業務、一定の病院の医業などの医療分野を加えました。先端技術の開発を支える基金の対象も広げています。
新しい仕組みもできました。経済安全保障上重要な海外事業を支えるため、国際協力銀行に新しい勘定を設け、劣後出資などで民間の資金を呼び込みます。内閣官房を司令塔とする総合的な経済安全保障シンクタンクの業務を経済産業研究所に加え、官民が対策を話し合う官民協議会も設けました。