更新日 2026年11月6日
仕入先や運送会社から値上げを求められても協議せず、価格を据え置く買い手への監視が強まっています。公正取引委員会(公取委)は9月25日、石油関連製品の値上がりをめぐる緊急調査でそう答えた発注者59名に、注意喚起の文書を送ったと公表しました。物流では公取委・国土交通省・中小企業庁が地方ごとに連絡会議をつくり、10・11月を荷主への集中監視月間としています。
集中監視月間では、国交省のトラック・物流Gメン(荷主や元請の不当な扱いを調べる担当官)に公取委と経済産業局が加わり、全国で荷主を回ります。問題が疑われる荷主には、貨物自動車運送事業法に基づく働きかけ・要請・勧告と、下請法を改めた取適法に基づく助言・指導が、同じ月間のうちに行われます。
土台になるのは9月28日に発足した「物流分野取引適正化地方ブロック連絡会議」で、公取委の地方事務所、経済産業局、運輸局が地域ごとに情報を持ち寄ります。荷主が運送会社に頼む運送は1月から取適法の対象になりました。2027年4月1日には、独占禁止法を荷主と物流会社の取引に当てはめる物流特殊指定の改正も施行される予定です。
製造業と流通業では、影響があったと答えた受注者が75%を超えました。公取委の緊急調査は、2026年2月以降の中東情勢で値上がりした石油関連製品の分が取引価格にどこまで反映されたかを調べたもので、対象は燃料のほか樹脂や塗料、包装フィルム、潤滑油にも及びます。
影響を受けた仕入先の約4割は、出荷や納期にも支障が出ていました。買い手は、値段の交渉と供給の確保を同じ相手と同時に進めていたことになります。
受注者が求めた値上げ額のうち発注者が受け入れた割合は、コスト全体で48.3%でした。満額以上を受け入れてもらった受注者もいれば、2割未満にとどまった受注者もいます。二次・三次以降の取引ほど受け入れの割合は低く、サプライチェーンの奥には値上げが届いていません。
協議を断られた受注者はわずかで、多いのは協議を申し出ていない受注者です。理由として挙がったのは、発注者との力関係や、決まった時期にしか価格を見直さない商慣習でした。
注意を受けた59名は、コストの上昇分を協議の場ではっきり話し合わずに価格を据え置いたか、値上げを求められたのに理由を書面やメールで返さずに据え置いたと答えた発注者です。公取委はこの2つを、優越的地位の濫用(強い立場を使って取引相手に不利益を押しつけること)にあたるおそれのある行為としています。
公表された例では、ある機械メーカーは自社の顧客が値上げを認めず原資がないとして、潤滑油や塗料の仕入先と協議しませんでした。医療用品の卸は、仕入先から要請文が出ていないことを理由に、衛生消耗品の10%程度の値上げを協議していません。反対に、数百の仕入先に調達システムで影響を聞き、届いた値上げの要請を協議のうえすべて受け入れた金属製品メーカーもあります。公取委は全都道府県で立入調査を進め、価格転嫁の実態を年内に公表します。
問われるのは、値上げを受け入れたかどうかより、協議したか、据え置くなら理由を書面で返したかです。仕入先や運送会社のコストの根拠を読み、協議の経過と回答を記録に残しながら価格を決めてきた調達・購買の担当者が強くなります。運送の委託も取適法の対象に入ったので、運賃や荷待ちの料金を契約に書き込んできた経験は、物流の取引でもそのまま生きます。