更新日 2026年11月6日

制度の解説|物流と取引

トラック適正化二法(許可の更新制と適正原価)

トラック適正化二法は、運送会社の事業の許可を5年ごとの更新制にし、国が定める「適正原価」を下回る運賃で運ぶことを禁じる法律です。運転者の賃金を確保し、担い手不足で荷物を運べなくなる事態を防ぐのがねらいです。荷主にもかかわる決まりがあり、許可のない業者に運送を頼むことは2026年4月から禁じられています。

制度の解説トラック適正化二法

荷主か、元請か、実際に運ぶ会社か

立場見分け方すること
運送を頼む荷主運送会社や利用運送事業者と契約して荷物を運ばせている頼む先が国の許可を持つ事業者かを確かめる
元請の運送会社荷主から引き受けた荷物を、ほかの運送会社に回すことがある。利用運送事業者も同じ扱い再委託を2次(再々委託)までに抑え、委託先に払う運賃も適正原価を下回らないようにする
実際に運ぶ運送会社自社の車両と運転者で運ぶ。下請として運ぶ場合も含む適正原価を下回る運賃で受けない。法令を守って許可の更新に備える

自社でも運び、一部をほかの会社に回す運送会社は、元請と実際に運ぶ会社の両方に当たります。その場合は、更新で見られる法令の順守から手を付けます。

運賃の下限と許可の期限

  1. 許可のないトラック、いわゆる「白トラ」に運送を頼むことが、荷主を含め誰であっても禁じられました。これまで処罰の中心は運んだ側で、頼んだ側は共犯と立証できたときにしか問えなかったためです。
  2. 適正原価は、燃料費や人件費、車両の減価償却費などを積み上げて国が定める運賃の下限です。これまで目安だった標準的運賃は廃止され、適正原価に置き換わります。
  3. 運送会社の許可は、5年ごとに更新を受けないと効力を失います。輸送の安全、社会保険料の納付、適正原価の受け取りなどで法令を守らない会社は更新されません。

更新制と適正原価は2028年6月までに

時期すること
2025年6月11日(済)二法が公布された。体制づくりを進める側の法律はこの日に施行
2026年4月1日(済)白トラへの委託の禁止と、再委託を2次までに抑える努力義務が始まった
2026年内をめど国の有識者検討会が、適正原価の考え方を提言にまとめる
2028年6月まで政令で定める日に、許可の更新制と適正原価を守る義務が始まる。適正原価には2年の経過措置(猶予の期間)がある

荷主は契約先の許可から確かめる

運送を頼む荷主

  1. 契約先の一覧をもとに、運送会社がどれも許可や届け出のある事業者かを確かめます。
  2. 運送会社から運賃の見直しを求められたときの窓口を決めます。協議に応じないまま運賃を据え置くと、取適法の違反に当たることがあります。

元請の運送会社

  1. 実運送体制管理簿(実際に運んだ会社を記録する帳簿)で、荷物ごとに何次の委託で運ばれているかを確かめ、3次より先に回っている便を洗い出します。
  2. 委託先に払う運賃を、燃料費・人件費・減価償却費と並べて見られる形に整えます。

実際に運ぶ運送会社 社会保険料の納付と輸送の安全の記録を、更新の審査で出せる状態にしておきます。

荷主の責任はどこまでか

Q 荷主にも、適正原価を守る義務はありますか。
A 守る義務を負うのは運送会社と利用運送事業者です。ただし、適正原価を払わない荷主は、違反の原因をつくったとして国から是正の指導を受けます。

Q 白トラに頼むと、荷主はどうなりますか。
A 白トラと分かって頼めば、それだけで違法になりうると国は説明しています。疑いのある荷主には、国のトラック・物流Gメン(荷主や元請を調べる担当官)がまず要請を出します。疑いが相当に強ければ勧告し、社名を公表します。

二法の中身なぜ今か、費目の一覧、委託の数え方

二法ができた背景 2024年4月から、トラック運転者の時間外労働は年960時間が上限になりました。国の検討会に出た民間の試算では、何も手を打たなければ2024年度に輸送能力の14.2%が足りなくなり、2030年度には34.1%に広がるとされていました。2026年3月に閣議決定された総合物流施策大綱は、官民の取り組みで2024年度の不足を「概ね克服」したと評価したうえで、2030年度までを集中して改革する期間に位置づけています。荷主の荷待ちを減らす側の手当ては物流効率化法が担い、二法は運賃と業界の構造に手を入れます。

二つの法律 貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和7年法律第60号)が、許可の更新制、適正原価、委託の次数、白トラの禁止を定めます。貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律(令和7年法律第61号)のほうは、更新の事務を担う体制や財源について政府が基本方針を定め、施行から3年以内をめどに必要な法制上の措置を講じるとしています。関係閣僚などでつくる物流政策推進会議も、この法律で置かれました。

許可の更新 許可の基準に「法令の規定を遵守して事業を遂行することが見込まれること」が加わりました。更新の事務の一部は独立行政法人に任せられます。申請には手数料がかかる想定で、審査は5年をめどに一巡させます。事業法の目的には労働環境の適正な整備に留意することが書き込まれ、運転者などの処遇を確保する措置が運送会社の義務になりました。これも更新の要件に入ります。

適正原価の費目と範囲 国土交通大臣が運輸審議会に諮って告示します。積み上げる費用は次のとおりです。

費目
燃料費
全産業の労働者1人あたりの平均賃金を踏まえた人件費
減価償却費
輸送の安全確保に必要な経費
委託手数料
事業を続けるために欠かせない投資の原資
公租公課

一般貨物の運送会社のほか、軽貨物、特定貨物の運送会社、貨物利用運送事業者(第一種の自動車、第二種の集配)にも適用されます。受注者は受ける運賃を、発注者は払う運賃を、それぞれ適正原価より下げない義務を負います。守れているかは、許可の5年間を通じた総運行距離や総労働時間などから、なるべく簡単に判定できる基準を設ける想定です。

委託の次数 真荷主から引き受けた元請を「ゼロ次」と数え、2次請け、つまり再々委託までに抑えるよう努めます。運送契約の書面を交付する義務と、実運送体制管理簿を作る義務は、2026年4月から貨物利用運送事業者にも及んでいます。

白トラ 無許可でトラック運送事業を営む者に運送を委託すると、100万円以下の罰金です。是正の指導は、委託しているおそれがあれば要請、疑うに足りる相当な理由があれば勧告と公表の2段階です。都道府県のトラック協会は、荷主が白トラに関わっている疑いを知ったとき、国土交通大臣に通知します。

試算の前提 14.2%は営業用トラックの輸送トン数で4.0億トン相当、34.1%は同9.4億トン相当で、どちらも株式会社NX総合研究所の試算です。運転者の年間の拘束時間を原則3,300時間とし、荷待ちを減らすなどの対策を取らなかった場合の数字です。持続可能な物流の実現に向けた検討会の中間取りまとめ(2023年2月)に載っています。

適正原価の水準はまだ決まっていない

項目状態
適正原価の水準と、守れているかの判定方法検討会は2026年7月17日から10月19日までに4回開き、年内をめどに提言をまとめる。その後、物流政策推進会議と運輸審議会を経て告示する。検討会では金額そのものは議論しない想定
更新制と適正原価が始まる日公布から3年以内の政令で定める日。日付は未定
更新の事務を担う独立行政法人詳細は3年以内をめどに決める

あわせて読む

出典

  1. 国土交通省「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律/貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律 概要」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001992449.pdf
  2. 国土交通省「適正原価の設定に向けた有識者検討会」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_mn4_000020.html
  3. 国土交通省「『適正原価の設定に向けた有識者検討会』について」第4回参考資料3、2026年10月19日 https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/002027440.pdf
  4. 持続可能な物流の実現に向けた検討会「中間取りまとめ」2023年2月 https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001588035.pdf
  5. 国土交通省「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」2026年3月31日閣議決定、概要 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001992929.pdf