更新日 2026年11月6日
取適法は、仕事を発注する会社が、規模の小さい受注者に代金の減額や支払いの遅れを押しつけないよう、公正取引委員会などが取り締まる法律です。下請法を改めて2026年1月に施行され、コストが上がっても協議せずに価格を据え置く商慣習をなくすねらいがあります。荷主が運送会社に直接頼む運送も新たに対象になり、対象かどうかは資本金に加えて従業員300人の線でも決まります。
| 立場 | 見分け方 | すること |
|---|---|---|
| 運送を頼む荷主(委託事業者) | 売った品などを取引の相手に届ける運送を頼む。自社が資本金3億円超か従業員300人超で、相手がそれ以下 | 発注の中身を書面で示し、受け取りから60日以内に現金で満額を払う。運送以外の作業を無償でさせない |
| 荷主から運送を受ける運送会社(中小受託事業者) | 資本金3億円以下か、従業員300人以下。荷主の資本金が1千万円超なら、1千万円以下の会社も対象 | コストが上がったら価格の協議を求める。無償の荷役や手形払いは違反だと示せる |
| 自社の拠点の間だけを運ばせる荷主 | 工場から自社の倉庫へ移すなど、取引の相手に届ける運送ではない | この運送は対象外。顧客へ届ける途中で自社の物流センターを通すなら、その区間は対象 |
従業員の線が加わったのは、事業の規模は大きいのに資本金が小さい会社や、減資で対象から外れる会社があったためです。運送会社がほかの運送会社に再委託する取引には、以前から下請法がかかっていました。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 2026年1月1日(済) | 取適法が施行され、荷主から運送会社への運送の委託が対象になった |
| 2026年10・11月 | 国土交通省の荷主への集中監視月間。10月上旬に各地で出発式を開き、公正取引委員会や経済産業局と合同で荷主を回る |
| 2027年4月1日(予定) | 独占禁止法の物流特殊指定が改正され、着荷主が発荷主にする特定の行為も対象に加わる |
物流特殊指定は、荷主が運送や保管を頼むときの不公正な取引のやり方を、独占禁止法にもとづいて定めたものです。
運送を頼む荷主
荷主から運送を受ける運送会社 値上げを求めるときは、最低賃金の上昇率や燃料の値動きなど公表された数字を根拠に、希望する額を自社から示します。応じてもらえなければ、公正取引委員会の申告窓口にオンラインや電話で相談できます。
Q 協議には応じたものの、値上げはしなかった。違反ですか。
A 協議に応じ、求められた点に必要な説明や根拠を示したうえで決めた代金なら、この禁止には当たりません。ただ、市価より著しく低い代金は、別に買いたたきとして禁じられています。
Q 発注した後に相手の従業員が増えたら、対象から外れますか。
A 外れません。従業員の数は発注した時点で判断し、その後の増減にかかわらず、その取引は対象のままです。
名前と用語 正式な名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。2025年5月16日に成立し、2026年1月1日に施行されました。言葉も変わり、親事業者は委託事業者に、下請事業者は中小受託事業者に、下請代金は製造委託等代金になりました。事業を所管する省庁の大臣にも、委託事業者への指導・助言の権限が与えられています。
規模の区分 取引の内容と規模の両方で対象かが決まります。特定運送委託は、製造委託や、運送・倉庫保管・情報処理の役務提供委託と同じ区分です。
| 委託事業者 | 中小受託事業者 |
|---|---|
| 資本金3億円超 | 資本金3億円以下(個人を含む) |
| 資本金1千万円超3億円以下 | 資本金1千万円以下(個人を含む) |
| 常時使用する従業員300人超 | 常時使用する従業員300人以下(個人を含む) |
上の区分に入らない役務提供委託や情報成果物作成委託では、資本金5千万円と従業員100人で線を引きます。従業員の数は賃金台帳の対象となる常時使用する従業員で数え、グループ会社は法人ごとに判断します。委託事業者に確認の義務はなく、相手が事実と違う数を答えて違反になった場合、すぐに勧告するのではなく必要に応じて指導・助言するとされています。
特定運送委託の範囲 事業者が、販売する物品、製造・修理を請け負った物品、作成を請け負った情報成果物を記録した物品を、取引の相手に届ける運送を他の事業者に委託することです(第2条第5項)。数量や経路の一部だけを委託する場合も含みます。たとえば、茨城の自社工場から広島の顧客まで、大阪の自社物流センターを中継して届けるなら、工場からセンターまでの区間も特定運送委託に当たります。
委託事業者の義務と禁止 義務は、発注の中身を書面で示すこと、取引の書類を2年保存すること、受け取りから60日以内に支払期日を定めること、遅れたら年14.6%の遅延利息を払うことです。禁止は11項目です。
| 第5条第1項 | 第5条第2項 |
|---|---|
| 受領拒否、支払遅延、減額、返品、買いたたき、購入・利用の強制、報復措置 | 有償支給原材料等の対価の早期決済、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直し、協議に応じない一方的な代金決定 |
受注者が了解していても、発注者に違法の意識がなくても違反になります。
手形と振込手数料 受け取りの60日後が支払日で、そこから手形の期日まで60日あれば、現金が届くのは120日後でした。改正後は、受け取りから60日以内の支払日に現金が届きます。電子記録債権やファクタリング、一括決済方式は、支払期日までに手数料を含む満額の現金を受け取れる場合に限って使えます。振込手数料を受注者に負担させて代金から差し引くことは、合意があっても減額に当たります。
運用基準にある違反の例 挙がっているのは、構内の事故防止を理由に運送会社の従業員を荷役の立ち会いに出させた例、自社の商品を運ぶ会社に運送以外の荷下ろしをさせた例、輸入通関のついでに関税と消費税を立て替えさせて払い戻さなかった例などです。
協議の求めに応じない 協議をはっきり断るほか、求めを無視したり、先延ばしを繰り返したりするのも含みます。応じたうえで説明が足りたかは、受注者の事情、求めた中身、発注者が示した内容の合理性、協議の経過を合わせて判断されます。協議を求めてよい事情には、労務費・原材料・エネルギーの値上がりのほか、納期の短縮、納入回数の増加、発注量の減少、発注者からの値下げの求めも入ります。
2026年度の取り締まり 公正取引委員会、国土交通省、中小企業庁は2026年9月28日、物流分野取引適正化地方ブロック連絡会議を立ち上げました。地方ごとに取適法の執行と、運送事業法の違反につながる荷主の行為の監視で連携します。発荷主から元請の運送会社への委託は、取適法の施行前は物流特殊指定で対応していました。改正後の物流特殊指定の正式な名前は「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の特定の不公正な取引方法」です。